ウィスターラットと並んでよく利用されるアウトブレッドラットにSDラットというのがあります。
SDとは、Sprague-Dawleyの略です。
今回は、SDラットの由来を見てみましょう。
オリジナルのストックは、1925年、ウィスコンシン大学の物理化学者である Robert Worthington Dawley 氏によって確立されました。
Spragueといのは、彼の最初の妻の旧姓で、自分の名字と併せて、Sprague-Dawleyと名付けたとのことです。
彼は、ウィスコンシン州のマディソンに Sprague-Dawley Inc.という会社を設立し、ラットの販売を始めました。Dawley氏の死後(1949年)、この会社は、ARS/Sprague-Dawley Companyとなり、今日では、Harlan Sprague-Dawleyとして世界的にも有名な実験動物供給元となっています。
さて、SDラットの由来です。
オリジナルのストックは、非常に大柄で元気な頭巾斑の雄ラット(ただし、アルビノをヘテロにもつ)に由来します。この雄ラットとアルビノの雌ラットを交配し、得られた産子のうち雌の産子に戻し交配をしました。このような戻し交配を7回繰り返し、アルビノのラットを用いて、複数ラインで、近交化を図りました。その中から、10頭を選び交雑しました。選抜の基準は、哺乳能力が高い、成長が早い、健康、気性がよい、亜ヒ酸(arsenic trioxide)に耐性があることです。
最初の雄ラットの由来は不明です。
交配に用いた雌ラットの由来は、Douredoure strainというもので、おそらくウィスター研究所に由来すると思われます。
現在でも、SDラットは複数の業者から購入可能です。
いずれの業者のカタログにも、SDラットは、性質温順、発育良好、繁殖良好、体型大型と紹介されています。つまり、選抜された特性を引き継いでいるのです。
ということは、現在のSDラットも亜ヒ酸に耐性があると想像されます。
参考文献
The Laboratory Rat: pp 32.
Rat Quality - A Consideration of Heredity, Diet and Disease: pp 86-97.