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2017年3月23日木曜日

ガイドRNAの発注

CRISPR/Cas9システムを使って遺伝子改変ラット(ノックイン)を作製する方法を紹介しています。

今回は、ガイドRNAの発注です。

ガイドRNAを合成する方法はさまざまありますが、簡単なのはRNA合成を企業に発注することです。

2.ガイドRNAの発注
  ・Integrated DNA Technologies (IDT) に依頼する場合を紹介します。
   IDTのHPにアクセス
   CRISPR-Cas9 genome editingのページへ
   Alt-R(TM) CRISPR-Cas9 crRNA, 10 nmolを発注
   配列等を入力

  ・CRISPR-Cas9を働かせるには、tracrRNAとCas9 nucleaseが必要です。
   これらも一緒に購入できます。

  ・語句説明
   crRNA:ターゲットに特異的なRNAオリゴです。
   tracrRNA:crRNAと結合し、Cas9と複合体を形成します。
   Cas9 Nuclease 3NLS:crRNA:tracrRNA duplexに結合します。
              核移行シグナルが3つ付加されています。 



ガイドRNAのデザイン

CRISPR/Cas9システムを使って遺伝子改変ラット(ノックイン)を作製する方法を紹介します。

今回は、狙った遺伝子の配列を変えて、アミノ酸置換(ミスセンスあるいはナンセンス)させます。

1.ガイドRNAのデザイン
 ・ターゲット配列周辺のゲノムDNAを準備する。

 ・ガイドRNAのデザインサイトを利用
  代表的なものとして、CRISPR DESIGN
     search name*: 適当な名前を入れる
     email address*: メールアドレスを入れる
   sequence type: other region (23-500 nt)を選択
     target genome: rat (rn5)を選択
     sequence: 貼り付ける

 ・Agree and Submitを押す。

 ・数分するとResults画面に変わるので、Guides & offtargetsを押して、結果をみる。

 ・貼り付けた配列上にデザインされたガイドRNAがスコア順にでてきます。

 ・ガイドRNAの3'側にはPAM配列が記載されています。

2017年3月6日月曜日

近交系数 (coefficient of inbreeding)

非常に小さい集団では、血縁関係のある個体同士の交配が行われます。これを近交 (inbreeding)といいます。近交の程度は、近交係数 (coefficient of inbreeding)で表します。

近交係数とは、ある個体の任意の遺伝子座位において2つの対立遺伝子が同一である確率、です。the probability that the two genes at any locus in an individual are identical by decent.

少し専門的ですが、この [identical by decent]とは、祖先が持っていたある対立遺伝子のコピーが、近交が起こった結果、次世代あるいはそれ以降の世代で「同一の」対立遺伝子のホモ接合となったことを言います。two genes that have  originated from the replication of one single gene in a previous generation may be called identical by descent or simply identical.

そのため、近交係数とは、以下のように定義されます。

「1個体がある遺伝子座位についてホモ接合体であって、しかもその二つの対立遺伝子が共通祖先にあった1つの対立遺伝子に由来したものである確率」

実験動物のマウスやラットでは、兄妹交配を20世代以上行うことで、様々な近交系 (inbred strain) が作製されています。このような近交系では、近交係数が0.986以上になると言われています。

参考資料
Introduction to quantitative genetics (Falconer & Mackay)
人類遺伝学―基礎と応用―改訂第2版(金原出版)

2017年3月2日木曜日

ミスセンス変異によるタンパク質の機能変化の予測

遺伝子のタンパク質コーディング配列に点変異が生じ、その結果コドンが変化し、蛋白質のアミノ酸が置換するような変異をミスセンス変異(missense mutation)と言います。

ミスセンス変異によるアミノ酸の置換が、タンパク質の機能に影響をおよぼすかどうかを、in silicoで予測することができます。

予測プログラムは、予測方法によって、以下の3つグループに分けられます。


1.進化的に保存された配列に基づく方法(sequence and evolutionary conservation-based methods)
進化の過程で保存されている領域はタンパク質の構造や機能に重要であるという予測にもとづく。
SIFT, Align-GVGD, PANTHERなど

2.タンパク質の配列と構造に基づく方法(protein sequence and structure-based methods)
置換前のアミノ酸と置換後のアミノ酸の性質が似ていれば、タンパク質の構造に変化を及ぼしやすく、反対に、似ていなければタンパク質の構造に変化を及ぼすと考えられる。アミノ酸置換によってタンパク質の構造に変化が生じるかを予測。
PolyPhen-2など

3.ニューラルネットワークを用いた学習に基づく方法(supervised-learning methods)
疾患に関連する変異と関連するとは知られていない変異のデータセットを用いて学習させる。
PMut, SNAP, PhD-SNPなど


参考
Misense Prediction Tool Catalogue

2015年8月4日火曜日

ラットの深頸リンパ節 (lynphocentrum cervicale profundum)

"Anatomy of the Laboratory Rat"より、ラットリンパ系。

深頸リンパ節 (Lymphocentrum cervicale profundum)

気管の外側、上部(起始部)と下部(中間部)に位置するリンパ節からなる。


どの領域からリンパ液が流れてくるか:
口腔底、咬筋、舌、咽頭、喉頭、甲状腺、食道起始部


どこへリンパ液が流れていくか:
tracheal trunk

2015年7月28日火曜日

ラットの浅頸リンパ節 (lynphocentrum cervicale superficiale)

"Anatomy of the Laboratory Rat"より、ラットリンパ系。

浅頸リンパ節 (Lymphocentrum cervicale superficiale)

外頸静脈分岐部、あるいはその尾部側に位置し、首の腹側の筋肉(胸鎖乳突筋)の表層にくっついている1つないしは2つのリンパ節からなる。

しばしは、耳の基部に小さなリンパ節があり、それは耳下腺に埋まっている。

どの領域からリンパ液が流れてくるか:
顎下リンパ節、耳、耳下腺、頭部の皮膚、後頭部、首

どこへリンパ液が流れていくか:
深頸部リンパ節

2015年7月27日月曜日

ラットの下顎リンパ節 (lymphocentrum mandibulare)

"Anatomy of the Laboratory Rat"より、ラットリンパ系。

顎下リンパ節 (Lymphocentrum mandibulare)

下顎腺の頭部外側に位置する2つから3つの節からなる。
しばしは、1つあるいは2つの小さなリンパ節が頭部側に連なる。

どの領域からリンパ液が流れてくるか:
舌、唾液腺、頭部吻側

どこへリンパ液が流れていくか:
深頸リンパ節
浅頸リンパ節


*リンパ中心 (lymphocentrum)
リンパ節 (lymph node) あるいは、ある特定の領域に常にみられるリンパ節の集団

2015年7月25日土曜日

Anatomy of the Laboratory Rat


"Anatomy of the Laboratory Rat"というラットの解剖学の本があります。

著者は、ミュンヘン大学のRudolf Hebelとパデュー大学のM.W.Stombergです。

1976年に出版されています。

内容は以下の章からなります。
骨格系
筋肉系
消化器系
泌尿器系
雄の生殖器
雌の生殖器
内分泌系
循環器系
リンパ系
神経系
外皮

図は全て手書きです。
手書きは写真と違って多少のアレンジはあると思いますが、そのぶんわかりやすいのではないでしょうか。

表紙に椎骨の絵が載っています。



2015年7月22日水曜日

アトピー性皮膚炎×アストロサイト

アトピー性皮膚炎による慢性的な痒みには脊椎のアストロサイトの活性化が関与しているとのことです。

アトピー皮膚炎モデルのNCマウスの痒みを支配する脊髄部位を、トレーサーを用いて同定。その脊髄部位(C3-C5)でアストロサイトの活性化astorogliosisを見出。

九州大学津田教授らの仕事

STAT3-dependent reactive astrogliosis in the spinal dorsal horn underlies chronic itch

http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.3912.html#methods


毎日新聞
http://mainichi.jp/shimen/news/20150721ddm041040067000c.html

2015年4月3日金曜日

Jcl:SD - 日本クレアのSDラット

Jcl:SDは日本クレアが生産、販売しているSDラットです。

1964年に米国チャールスリバー社から導入されました。

大型で温順な性格。
安全性試験を始め、薬理・毒性・生化学・栄養など幅広い分野で使用されています。

参考資料
日本クレア総合カタログ

Crl:CD (SD) - チャールスリバーのSDラット

Crl:CD (SD)は、日本チャールスリバーで生産、販売されているSDラットです。

CDというのは、Ceasarean Derivedの略で、帝王切開により微生物クリーニングされたコロニーに由来するという意味です。

由来は、1950年にSprague Dawley Inc.から米国チャールスリバーに導入され、その後、世界各国のチャールスリバーに分与されました。

1991年に、世界各国の生産施設で生産されているCD(SD)ラットの遺伝的なばらつきを標準化するために、それぞれの国のチャールスリバー生産施設のCD(SD)ラットコロニーから100ペアのCD(SD)ラットが選抜されました。

この100ペアの親種から生まれた200腹分の産子を基に、米国マイアミ州のWilmingtonにて、IGS Foundationコロニーが設立されました。

1994年に日本チャールスリバーに導入され、1997年にFoundationコロニーはアイソレーター内に移されました。

比較的大型で発育が良い。
繁殖性良好
おとなしく取り扱いやすい

参考資料
日本チャールス・リバー株式会社2014総合カタログ
Charles river technical sheet; International Genetic Standardization (IGS) Program

2015年4月2日木曜日

Slc:SD - 日本エスエルシーのSDラット

日本で生産されているアウトブレッドラットのうちSDラットを紹介していきます。

SDラットは、Sprague Dawley ラットの略です。その由来は以前紹介しました。

妻の旧姓をつけられたラット

また、SDラットの使用数は、Wistarラットの倍程度です。

SD6割、Wistar3割

さて、Slc:SDですが、1968年に米国チャールスリバー社から、日本エスエルシーに導入されました。その後、生産と供給が行われています。

性質温順で取り扱い易い。
比較的大型で発育良好。
繁殖性良好。
安全性試験や薬理試験等に幅広く使用されています。

参考資料
日本エスエルシーカタログ
日本エスエルシー2013実験動物データ集

2014年10月10日金曜日

2週齢以下のマウス・ラットの個体識別

2週齢以下(生後14日以下)のマウスやラットの個体識別をする場合があります。

未だ毛が生えそろっていないので、ピクリン酸などによる色素塗付法を用いることができません。
また、耳介も未発達なため、耳パンチ法による個体識別もできません。

そこで、新生児のマウス・ラットを個体識別には、やむを得ない処置として、指先を切断することが行われます。

注意点としては、

  1. 局所麻酔薬を用いる
  2. 片側の後肢の一本の指先のみを切断する
  3. 切断した指先からDNAを抽出し、遺伝子型解析に用いるべき

後肢には、5本の指があります。一本ずつ切断することで、最大10頭を識別できます。

前肢を切断してはいけません。なぜなら、物をつかんだり、毛づくろいする能力を低下させる可能性が高いからです。


参考資料
遺伝子改変マウス作出における洗練(refinement)および削減(reduction):Laboratory Animals 37, Suppl 1, July 2003の訳出; p45

2014年10月9日木曜日

約1日半のずれ

マウスの平均妊娠期間は、約18~19日、ラットでは約20~21日です。

その理由は、ラットでは、マウスに比べ、着床が約1日半遅れるため、とされてます。

着床が完了するのが、マウスでは胎齢6.5日、ラットでは7.75日です。
その後は、ほぼ同じペースで発生します。

ということは、マウスの胎齢と同じ発生段階のラット胎児を得るには、そのマウス胎齢プラス1ないし2日のラット胎児を得る必要があります。

例えば、神経堤の形成は、マウスでは8日、ラットでは10日、中腎管の形成はマウスで9.5-10日、ラットで10.5-11日です。また、体表に毛包が出現するのは、マウスで14日、ラットで15日と言われています。

最後に、いつを胎齢0日とするか、です。
一般的には、膣栓確認日を胎齢0日、としています。

参考資料
実験動物学各論; p21
マウス・ラットの解剖と器官発生 小児外科 29(2):143-152
日本エスエルシー実験動物価格表

2014年7月25日金曜日

Slc:Wistar/ST - 日本エスエルシーのウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その6です)。

Slc:Wistar/STは、日本エスエルシーが生産している2種類のウィスターラットのうちのひとつです。
もう1種類は、Slc:Wistarというのもでした。

1974年、東京大学医科学研究所から導入されました。

10週齢で、雄300g前後、雌200g弱と比較的大型です。

Slc:WistarはかなりF344ラットと似た表現型を示します。
しかし、このSlc:Wistar/STはいわゆる”ウィスターラット”で、体型が大型、性質温順です。

STの由来は、SLC Takagi であると耳にしたことがありますが、本当のところは知りません(Takagiは日本エスエルシー社の経営者の苗字です)。

参考資料
日本エスエルシー株式会社総合カタログ

2014年7月24日木曜日

Slc:Wistar - 日本エスエルシーのウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その5)です。

Slc:Wistarは日本エスエルシー社が生産しているウィスターラットです。

1968年に東京大学医科学研究所から導入されました。

10週齢で、雄250g前後、雌150g前後と比較的小型です。

このSlc:Wistarラットは確かにアウトブレッドラットですが、その遺伝的組成はF344(Fischer)ラットと非常に似ていることが以前から指摘されています。
例えば、成長曲線、生存率、腫瘍の発生部位や頻度などがF344ラットと類似していることが指摘されています。また、Slc:Wistarで得られた白血病細胞がF344ラットに移植できることから免疫系の類似点も指摘されています。

毒性学の分野では、Slc:WistarはF344に非常に似ているということはよく知られているようです。
内閣府の食品安全委員会の農薬専門調査会評価第二部会の委員のひとりがこんなことをおっしゃています。

「・・・このSlc:WistarはもともとFischerラットですので、・・・」
食品安全委員会 農薬専門調査会 評価第二部 第21回会合議事録 20ページ


我々の研究から、ゲノムレベルでも、Slc:WsitarとF344ラットが非常に似ていることが判明しつつあります。

参考資料
日本エスエルシー株式会社カタログ
Maekawa et al., J Toxicol Sci 8:279-290, 1983
Tayama et al., Exp Anim 35:65-76, 1986
Yagami et al., Exp Anim 40:407-410, 1991


2014年7月22日火曜日

Jcl:Wistar ― 日本クレアのウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その4)です。

Jcl:Wistarは日本クレア社が生産している2種類のウィスターラットのうちのひとつです。
もう1種類は、BrlHan:WIST@Jcl(GALAS)というものでした。

Jcl:WistarはWistar研究所(米国)に由来します。
1970年にCarworth Farm(英国)より導入されました。

カタログ等によりますと
12週齢で、雄300g前後、雌200g前後。
中型。

各種要因に対して優れた感受性があり、特に学習能力に優れている。
行動薬理、毒性、薬理、薬効試験や安全性試験など、幅広い分野の研究に使用されている。

104週生存率は、雄で75.4%、雌で44.8%

導入後、40年以上経過していますので、ある程度近交化が進んでいると思われます。
以前、我々はこのJcl:Wistarラットでは、ピンクアイダイリューションという毛色変異遺伝子がホモに固定していることを見つけました(Kuramoto et al, Mammalian Genome 2005)。
Jcl:Wistarはアルビノなので、毛色変異を持っていてもその効果が表現型として見えません。
ところが、有色のラットと交配するとこの毛色変異の効果が表に現れます。

我々がこのことに気付いたのは偶然でした。
Jcl:Wistar由来のアルビノのKaken Hairless Rat (KHR)というラットと有色のBrown Norway (BN) ラットとの交配実験を行ったときに、毛の色が薄くて、ピンク色の眼をしたラットが生まれてきたのです。
BNラットはピンクアイダイリューション変異を持っていないので、KHRラットがこの変異を持っていることは確実でした。そして、その由来となったJcl:Wistarまでもがピンクアイダイリューション変異を持っていることが判明したのです。


参考資料
日本クレア株式会社総合カタログ
日本クレア株式会社ホームページ

2014年7月18日金曜日

BrlHan:WIST@Jcl(GALAS) - 日本クレアのウィスターハノーバ

日本で入手できるアウトブレッドラット(その3)です。

BrlHan:WIST@Jcl(GALAS)は日本クレアが生産しているウィスターハノーバラットです。

由来は、他社のウィスターハノーバラットと同様です。

Zentral Institut fur Versuchstierzucht (ハノーバ、ドイツ)に由来。
1989年に156ペアがInstitute for Biomedical Research (IBM)へ導入
(IBMはその後、BRL Ltd、RCC Ltdと改名され現在へ)
1998年にRCCからGALASメンバーへ分与

GALASとは、Global Alliance for Laboratory Animal Standardizationの略で、実験動物標準化のための世界協定です。この協定は、1998年10月、日本クレア、RCC(スイス)、M&B(デンマーク)、Taconic Farm(米国)の4社によってつくられました。この4社がGALASメンバーです。

日欧米の三極で使用されるウィスターハノーバの品質を、同一の生産・供給体制を構築することで保証しようというものです。

GALASメンバーが生産するウィスターハノーバの名前は以下の通りです。
日本クレア:BrlHan:WIST@Jcl(GALAS)
RCC:BrlHan:WIST@Brl(GALAS)
M&B:BrlHan:WIST@Mol(GALAS)
Taconic Farms:BrlHan:WIST@Tac(GALAS)


参考資料
日本クレア株式会社総合カタログ
Global Alliance for Laboratory Animal Standardization (GALAS)について


2014年7月16日水曜日

Crlj:WI ― チャールス・リバー社のウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その2)です。

Crlj:WIは日本チャールスリバー社が生産している2種類のウィスターラットのうちのひとつです。
もう1種類は、Crl:WI(Han)というウィスターハノーバラットというものでした。

このラットはWistar研究所(米国)に由来します。
1947年にWistar InstituteからScientific Products Farm (チャールスリバーUKの前身)へ導入
1975年にチャールスリバーUSAに移動
1981年に日本チャールス・リバーに導入
水腎症の発生率が低いという理由で選ばれたとのこです。

10週齢体重が、雄で310-410g、雌で200-270g と比較的大型
繁殖性良好
取り扱い容易

安全性、がん、神経系、循環器系、老化、免疫、代謝など様々な分野で利用されています。

ウィスターラットと呼ばれているものでも、種類によってその特性は様々です。
日本には、a) 戦前に導入されたウィスターラット、b) 戦後に導入されたウィスターラット、 c) ハノーバーウィスターラット の大きく分けて3つの種類があります、というかありました。

ありました、というのは、戦前に導入されたウィスターラットは、主に大学等で維持されており、現在では、アウトブレッドとして維持されているものはないためです。

というわけで、現在、日本で利用できるウィスターラットは、いわゆる”ウィスターラット”(戦後派)と比較的最近になって導入された”ウィスターハノーバ”となります。

各実験動物生産業者も、この2ラインナップを生産・販売していることが多いです。

別名
Crlj:Wistar


参考資料
日本チャールス・リバー株式会社2014総合カタログ
Charles River Laboratories ホームページ




2014年7月15日火曜日

Crl:WI (Han) ― チャールス・リバー社のウィスター・ハノーバ

日本で入手できるアウトブレッドラット(その1)です。

日本チャールス・リバーが生産しているウィスターラットは、2種類あります。
ひとつが、このCrl:WI (Han)、もうひとつが、Crlj:WIです。

もともとは、ドイツハノーバのZentral Institut fur Versuchstierzucht (実験動物繁殖中央研究所)のウィスターハノーバ(Han:WIST)に由来します。
このウィスターハノーバラットがスイスのBRL(Biological Resource Laboratories)に移され、Glaxo Wellcomeに供給。

1996年にチャールスリバーUKに導入。
1997年にチャールスリバーUSAに移動。
2007年に日本チャールスリバーに導入。

10週齢体重が、雄で約250g、雌で約180g と小型
生存率は104週で75%程度
平均産子数は9-10匹/腹

安全性、発がん性、老化などの分野で利用されています。

ある物質ががんを作るかどうかをラットを用いて試験します(がん原性試験)。
しかし、がんが体の中にできるには時間がかかります。そのため、使用するラットは長生きの方が試験期間中の歩留りがよく、経済的で、好まれます。

Wistar Hannoverラットは、生存率が2年で約75%と高いので、このような時間のかかる試験(がん、老化など)に適しているとされています。

Hannoverという名前からわかるように、Wistar Hannover ラットは主にヨーロッパにおいて安全性試験等に用いられてきました。このラットを毒性・薬理学分野での安全性試験でもちいる国際標準ラットとするための動きがありました。

しかし、アウトブレッドラットは遺伝的な統御が難しいので、繁殖集団が小さくなると瞬く間に繁殖コロニー間で分岐がおこります(遺伝的浮動を参照)。

そこで、生産コロニー間でラット同士をやりとりし、各コロニーを遺伝的組成を均一化する試みがなされています。この試みのうちチャールスリバー社で行われている遺伝管理方法を、International Genetic Standardization (IGS) といいます。

IGSの目的は、生産過程における近交化を最小限にし、ヘテロ接合性を維持し、コローニー間の分岐を回避することです。

別名
Wistar Han
Wistar Hannover
Hannover Wistar
Crl:WI(Glx/BRL/Han)IGS


参考文献
日本チャールス・リバー株式会社2014総合カタログ
日本クレア株式会社総合カタログ