『日本の動物観-人と動物の関係史』
石田戢、濱野佐代子、花園誠、瀬戸口明久
東京大学出版会
2013年3月15日初版
日本人の動物観を、ペット、産業動物、野生動物、展示動物の観点から考察した書。
日本人は、ヒトと動物の間に断絶はなく、連続性をみている、とする。例えば、人が動物になったり、動物が人に化けたりする。このような昔話が多数存在する。それゆえ、人を中心とした「ウチ」とその周辺の「ソト」と厳密に使い分ける。動物は、「ウチ」から「ソト」へ、ペット、家畜、野生動物の順に配置される。
ペットは、室内飼いが多くなり、今や、「ウチ」のヒト、つまり家族となった。そこでコンパニオンアニマルと呼ばれる。
家畜などの産業動物は、以前は零細に飼育されていたが、今や大規模に飼育される。効率性が優先されるので、厳密に管理されており、もはや部外者は飼育の様子を見ることは難しい。そして、徐々に「ソト」の動物となってきた。その最たるものは、実験動物。実験動物はその飼育・繁殖が外部の者にはほとんどまったくといっていいほどわからない。また、話題にのぼることもない。そして、普段、見ることも触れることもないので、一般の人にとっては、関心がわかない。
野生動物は、もっとも「ソト」に存在する。まったくもってうかがい知れない世界に住んでいるので、人に害を及ぼさない限り、人は基本的に無関心。
動物実験に関しては、一般の人々がどのような関心をもっているか、気になるところです。日本にも、動物実験を行っているところがあり、それに反対する方々もいます。法律も制定されていますが、国民的に話題にのぼることはほとんどありません。そのことが、私にはずっと疑問でしたが、この本を読んで少しわかったようなきがしました。一般の日本人は、動物実験なんて見たこともない(見ようと思っても見ることはほぼ不可能)。実際、動物実験の現場は幾重にも隔離され、遠い遠い「ソト」となってしまっています。
終章での一文が気になります。「実験動物への倫理的取り扱いは、動物福祉運動と動物実験の実施者である企業・研究者との内輪の対立とみられており、それゆえに動物実験への制約はよりシビアになっていくと思われる」