ある集団が一定の大きさで維持されている実験動物では、「遺伝的浮動」によって、遺伝子組成に変化が出る可能性について述べました。
実験動物関連で、「遺伝的浮動」の影響を受けやすい集団とは、どのような集団でしょう。
条件としては、集団のサイズが限定されており、ヘテロ性が残存している集団です。
それは、アウトブレッド(outbred)と呼ばれる集団です。
アウトブレッドとは、インブレッド(inbred; 近交系)に対する語で、”遺伝的に明確ではない”集団のことをいいます。
例えば、マウスではCD-1, ICR, ddYなど、ラットではWistar, SDなどです。
ヘテロ性が残存していると考えられるので、雑種強勢(hybrid vigor)を示します。例えば、寿命が長い、病気に強い、性成熟が早い、産子数が多い、新生児の死亡率が低い、速い成長、サイズが大きいなどの形質を示します。
近交系に比べ、生産効率が良いので、安価です。そのため、様々な分野で汎用されています。
アウトブレッドの交配は、人為的な選抜を極力避けるよう、ランダム交配によります。しかし、本当にランダムな交配というのは不可能です。そこで、ローテンションシステムという方法で交配します。
要するに、世代を経ても、遺伝子頻度が変化しないように、交配方法を工夫します。
「遺伝的浮動」は避けられないものですが、その影響を極力小さくするために集団のサイズを大きくしています。
参考文献
Mouse Genetics concepts and applications p42
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