最も古いアウトブレッドストックとして、パリ植物園で飼育されてたラットがいます。
1856年に発行された雑誌"Magasin Pittoresque"3月号の75-76ページに記事があります。
この記事をブリュッセルのルーバン大学医学部のBazin博士がRat News Letter (1988) で紹介しています。雑誌の記事はフランス語で書かれているので、内容を英語に翻訳し紹介しています。
それでは、1850年ごろ(今から160年ほど前)、パリでの飼育ラットの状況を見てみましょう。
当時、パリの植物園内で飼育されていた爬虫類の餌としてアルビノマウスと黒白まだらのラットが飼育されていました。これらのマウスやラットは、生餌として、あるいは屠殺された直後に爬虫類に与えられました。
爬虫類の担当者は、主に、黒白まだらのラット(黒い頭、背部に黒いストライプ、他の部分は白)を繁殖していました。これらのラットは繁殖力が旺盛で、1年に8産とれることもあり、1産あたりの産子も10-12匹であったようです。ラットたちがかじらないように、金属を貼った木製のケージで繁殖が行われました。
パリ植物園は、1635年に王立の薬草園として開設され、1793年に自然史博物館となりました。そのころから、博物館内の動物園では、爬虫類が飼育されていたと想像されます。その爬虫類を飼育するためにマウスやラットが繁殖されていたのでしょう。
そうすると、1850年よりもかなり以前から、パリ植物園ではラットが飼育されていたと思われます。
そのため、パリ植物園の頭巾斑ラットストックが、最古のストックとして紹介されているのです。
Bazin博士は、1988年にパリ植物園の爬虫類館を訪れ、この白黒まだらラット譲り受ました。
そして、研究室に持ち帰り、それらをもとに近交系を確立しました。
現在では、PAR系統として知られています。PAR系統は野生由来のBN系統と並んで、実験用ラット系統のなかで、最も遺伝的に離れた系統であることが報告されています。
パリ植物園は現在でもパリにあります。そこには動物園があり爬虫類も飼育されています。
今でも、ラットが飼育されているのでしょうか?いつか訪ねてみたいものです。
参考文献
The Laboratory Rat, 99 33.
Rat News Letter 20: 14, 1988.
Genome Res. 7: 262-267, 1997.
2014年5月28日水曜日
2014年5月27日火曜日
妻の旧姓をつけられたラット
ウィスターラットと並んでよく利用されるアウトブレッドラットにSDラットというのがあります。
SDとは、Sprague-Dawleyの略です。
今回は、SDラットの由来を見てみましょう。
オリジナルのストックは、1925年、ウィスコンシン大学の物理化学者である Robert Worthington Dawley 氏によって確立されました。
Spragueといのは、彼の最初の妻の旧姓で、自分の名字と併せて、Sprague-Dawleyと名付けたとのことです。
彼は、ウィスコンシン州のマディソンに Sprague-Dawley Inc.という会社を設立し、ラットの販売を始めました。Dawley氏の死後(1949年)、この会社は、ARS/Sprague-Dawley Companyとなり、今日では、Harlan Sprague-Dawleyとして世界的にも有名な実験動物供給元となっています。
さて、SDラットの由来です。
オリジナルのストックは、非常に大柄で元気な頭巾斑の雄ラット(ただし、アルビノをヘテロにもつ)に由来します。この雄ラットとアルビノの雌ラットを交配し、得られた産子のうち雌の産子に戻し交配をしました。このような戻し交配を7回繰り返し、アルビノのラットを用いて、複数ラインで、近交化を図りました。その中から、10頭を選び交雑しました。選抜の基準は、哺乳能力が高い、成長が早い、健康、気性がよい、亜ヒ酸(arsenic trioxide)に耐性があることです。
最初の雄ラットの由来は不明です。
交配に用いた雌ラットの由来は、Douredoure strainというもので、おそらくウィスター研究所に由来すると思われます。
現在でも、SDラットは複数の業者から購入可能です。
いずれの業者のカタログにも、SDラットは、性質温順、発育良好、繁殖良好、体型大型と紹介されています。つまり、選抜された特性を引き継いでいるのです。
ということは、現在のSDラットも亜ヒ酸に耐性があると想像されます。
参考文献
The Laboratory Rat: pp 32.
Rat Quality - A Consideration of Heredity, Diet and Disease: pp 86-97.
SDとは、Sprague-Dawleyの略です。
今回は、SDラットの由来を見てみましょう。
オリジナルのストックは、1925年、ウィスコンシン大学の物理化学者である Robert Worthington Dawley 氏によって確立されました。
Spragueといのは、彼の最初の妻の旧姓で、自分の名字と併せて、Sprague-Dawleyと名付けたとのことです。
彼は、ウィスコンシン州のマディソンに Sprague-Dawley Inc.という会社を設立し、ラットの販売を始めました。Dawley氏の死後(1949年)、この会社は、ARS/Sprague-Dawley Companyとなり、今日では、Harlan Sprague-Dawleyとして世界的にも有名な実験動物供給元となっています。
さて、SDラットの由来です。
オリジナルのストックは、非常に大柄で元気な頭巾斑の雄ラット(ただし、アルビノをヘテロにもつ)に由来します。この雄ラットとアルビノの雌ラットを交配し、得られた産子のうち雌の産子に戻し交配をしました。このような戻し交配を7回繰り返し、アルビノのラットを用いて、複数ラインで、近交化を図りました。その中から、10頭を選び交雑しました。選抜の基準は、哺乳能力が高い、成長が早い、健康、気性がよい、亜ヒ酸(arsenic trioxide)に耐性があることです。
最初の雄ラットの由来は不明です。
交配に用いた雌ラットの由来は、Douredoure strainというもので、おそらくウィスター研究所に由来すると思われます。
現在でも、SDラットは複数の業者から購入可能です。
いずれの業者のカタログにも、SDラットは、性質温順、発育良好、繁殖良好、体型大型と紹介されています。つまり、選抜された特性を引き継いでいるのです。
ということは、現在のSDラットも亜ヒ酸に耐性があると想像されます。
参考文献
The Laboratory Rat: pp 32.
Rat Quality - A Consideration of Heredity, Diet and Disease: pp 86-97.
2014年4月30日水曜日
ラットの唾液腺
ラット頸部の皮下組織を観察する機会がありました。
組織としては、腹側から背側に向かって、顎下リンパ節、耳下腺、舌下腺、顎下腺があります。
組織としては、腹側から背側に向かって、顎下リンパ節、耳下腺、舌下腺、顎下腺があります。
- 顎下リンパ節 (lymphonodi submandibulares)
黄色っぽい。
このラットでは少し腫れています。 - 耳下腺 (glandula parotis)
透明でゲル状の脂肪のような組織に白い腺がみえます。
この写真では背部側にめくられて見にくいです。 - 舌下腺 (glandula sublingualis)
顎下腺の最頭部側に位置します。
顎下腺と区別がつけにくいです。 - 顎下腺 (glandula mandibularis)
複数の葉状からなる組織です。
ピンク色っぽい。 - 涙腺 (glandula lacrimalis)
耳介の皮下直下にあります。
茶色っぽい。
耳下腺、舌下腺、顎下腺をあわせて唾液腺 (salivary gland) といいます。
参考文献
The Laboratory Rat
Editied by Georg J Krinke.
Academic Press
2014年4月2日水曜日
土をこねて物の形をつくる。穴に鼠がはいる様子。
理化学研究所が「STAP細胞」作製を報告した論文中に、捏造と改竄という意図的な不正があったとする最終報告を出しました。
『広辞苑』によりますと、
「捏造」とは、事実でないことを事実のようにこしらえて言うこと。土などをこねてものの形を作ること。
「改竄」とは、字句などを改めなおすこと。多く不当に改める場合に用いられる。
以下、『新字源』によりますと、
捏という漢字は、ねばついた土に手を加えて「こねる」、からめるという意。
これから派生して、
1) こねる、からめる。
2) こじつける、でっちあげる。
3) からめる、にぎる。
4) おす、おさえる、おさえつける。
『広辞苑』によりますと、
「捏造」とは、事実でないことを事実のようにこしらえて言うこと。土などをこねてものの形を作ること。
「改竄」とは、字句などを改めなおすこと。多く不当に改める場合に用いられる。
以下、『新字源』によりますと、
捏という漢字は、ねばついた土に手を加えて「こねる」、からめるという意。
これから派生して、
1) こねる、からめる。
2) こじつける、でっちあげる。
3) からめる、にぎる。
4) おす、おさえる、おさえつける。
竄という漢字は、穴に鼠が隠れるさま、から逃げ隠れるという意。
1) かくれる、かくす。
2) のがれる、にげる。
3) はいる、あなにはいる。
4) しみいる、香などがしみこむ。
5) ひそか、かすか。
6) はなす、遠方に追放する、流竄、竄逐。
7) あらためる、文字をかえる、竄改、改竄。
「捏」が、手を使い、土をこねて、形のないものから形のあるものへ作り上げるという意味を示すことは、イメージしやすいです。
「竄」ですが、穴と鼠の組合せですので、隠れる、逃れるというのは、イメージできます。
そこから、穴に入る→しみいる→しみいったものがかすかに出てくる→放つ、追放する→もとのものとは違ったものになる、というような意味の展開でしょうか?
鼠(ねずみ)関連の漢字だけに気になります。
2014年3月18日火曜日
ケージ交換
実験動物のマウスやラットは、ケージという箱状の入れ物で飼育されています。
ケージは、アルミやプラスチックからできています。
フタは、金属製で格子状となっており、固形試料を入れるためにくぼみがつくられています。
マウスやラットは、格子の隙間から餌をかじるわけです。
ケージには、パルプ製あるいは木製のチップが敷き詰められています。
これらを床敷きといいます。
床敷きは、糞尿の拡散防止、巣材となり、ケージの居住性を高めます。
マウスやラットは、ケージ内で糞尿をします。1週間程度で、床敷きが汚れてきます。
そこで、週に一度、ケージとそのフタの交換を行います。これをケージ交換といいます。
ケージ交換時の3大留意点
ケージは、アルミやプラスチックからできています。
フタは、金属製で格子状となっており、固形試料を入れるためにくぼみがつくられています。
マウスやラットは、格子の隙間から餌をかじるわけです。
ケージには、パルプ製あるいは木製のチップが敷き詰められています。
これらを床敷きといいます。
床敷きは、糞尿の拡散防止、巣材となり、ケージの居住性を高めます。
マウスやラットは、ケージ内で糞尿をします。1週間程度で、床敷きが汚れてきます。
そこで、週に一度、ケージとそのフタの交換を行います。これをケージ交換といいます。
ケージ交換時の3大留意点
- 動物の観察
ケージ交換は、動物に触れる絶好の機会です。
動物の健康状態を観察します。 - 動物を逃がさない
動物が逃げた場合は、捕獲するまでその場を離れてはなりません。
まわりの人に呼び掛けて、必ず捕獲しましょう。 - 餌と水を与える
餌と水を十分に与えましょう。
ケージ交換は、動物の”住”と”食”を保障するものです。
水は、自動給水と給水ビンによるものがあります。
給水ビンの場合は、清潔な給水ビンに新鮮な水を入れて与えます。
2014年3月5日水曜日
[excel] 日付に関する関数(1)基礎編
<知っておくこと>
- 日付は、固有のシリアル値をもつ
- シリアル値から、日付に関する情報(年、月、日、曜日)を得る
- だから、まずはシリアル値を得てから、関数を利用する
<関数:シリアル値から数値へ>
- day: シリアル値から日の数値を返す。1~31の整数。
- month: シリアル値から月の数値を返す。1~12の整数
- year: シリアル値から年の数値を返す。1900~9999の整数。
- weekday: シリアル値から曜日の数値を返す
<関数:数値からシリアル値へ>
- date: 第1引数=年の数値、第2引数=月の数値、第3引数=日の数値
- 第2引数=0はひと月前、第3引数=0は一日前、のシリアル値を返す。
- =date(2014,1,1)なら、2014/1/1のシリアル値
- =date(2014,1,0)なら、2014/1/1の一日前なので、2013/12/31のシリアル値。
- =date(2014,0,1)なら、2014/1/1のひと月前なので、2013/12/1のシリアル値。
- =date(2014,0,0)なら、2014/1/1のひと月前の一日前なので、2013/11/30のシリアル値。
2014年3月4日火曜日
哲学入門のための哲学者入門
『哲学個人授業』
<殺し文句>から入る哲学入門
鷲田清一、永江朗
2008年2月6日初版
バジリコ株式会社
『考えすぎた人』
お笑い哲学者列伝
清水義範
2013年6月20日発行
新潮社
前者は、フリーライター永江朗が元阪大学長で哲学者の鷲田清一の個人授業を受けるという設定。毎回、一人の哲学者とその著作から、心が震えるような言葉、グッとくるフレーズを選び、そのフレーズの前後の文章も含めて、言葉の意味やその哲学者の考え方を鷲田さんが解説するというもの。
いままでもやもやとしていたものが、哲学書の中の言葉、文句に出会うことで、一挙に結晶化する、そんな経験が哲学書にはある。このように鷲田さんは述べられています。
この本の中で紹介されている言葉、文句のなかで、私が一番グッときたものは、ロラン・バルトの『テクストの快楽』より、
精神分析が的確にいっているように、エロティックなのは間歇である。二つの衣服(パンタロンとセーター)、二つの縁(半ば開いた肌着、手袋と袖)の間にちらちら見える肌の間歇。誘惑的なのはこおのちらちら見えることそれ自体である。更にいいかえれば、出現―消滅の演出である。
確かに縁、境界には眼がいきますよね。眼から入ってくる膨大な情報を短時間で処理するには、境界を第一に認識し、フラットな部分はすっ飛ばすというような機構が人間の脳には備わっているといわれています。衣服でいえば、肌との境目もそうですが、色の境目、素材の境目(アクセサリーや時計)に自然と眼がいきますよね。
2冊目は、様々な作家の文体をまねてユーモア小説を書く清水さんの小説。哲学者12人を選び、その哲学というより、人となりを描く。ソクラテスからサルトルまで時代順に紹介。
カントに関する物語が印象に残る。カントの若手研究者が、合コンでカント哲学を紹介するが、みんなドン引き。そこで、友人が彼をトイレに連れて行きいさめる。そして一言「そもそもカントの哲学がわかってるのかよ」。その後彼は、トイレから戻り、みんなの前で、カントの哲学を本当は理解していない、と白状。ある意味シュールでリアルということで場が和む。
これは、作者清水さんの哲学解説本の作者への皮肉かな。
<殺し文句>から入る哲学入門
鷲田清一、永江朗
2008年2月6日初版
バジリコ株式会社
『考えすぎた人』
お笑い哲学者列伝
清水義範
2013年6月20日発行
新潮社
前者は、フリーライター永江朗が元阪大学長で哲学者の鷲田清一の個人授業を受けるという設定。毎回、一人の哲学者とその著作から、心が震えるような言葉、グッとくるフレーズを選び、そのフレーズの前後の文章も含めて、言葉の意味やその哲学者の考え方を鷲田さんが解説するというもの。
いままでもやもやとしていたものが、哲学書の中の言葉、文句に出会うことで、一挙に結晶化する、そんな経験が哲学書にはある。このように鷲田さんは述べられています。
この本の中で紹介されている言葉、文句のなかで、私が一番グッときたものは、ロラン・バルトの『テクストの快楽』より、
精神分析が的確にいっているように、エロティックなのは間歇である。二つの衣服(パンタロンとセーター)、二つの縁(半ば開いた肌着、手袋と袖)の間にちらちら見える肌の間歇。誘惑的なのはこおのちらちら見えることそれ自体である。更にいいかえれば、出現―消滅の演出である。
確かに縁、境界には眼がいきますよね。眼から入ってくる膨大な情報を短時間で処理するには、境界を第一に認識し、フラットな部分はすっ飛ばすというような機構が人間の脳には備わっているといわれています。衣服でいえば、肌との境目もそうですが、色の境目、素材の境目(アクセサリーや時計)に自然と眼がいきますよね。
2冊目は、様々な作家の文体をまねてユーモア小説を書く清水さんの小説。哲学者12人を選び、その哲学というより、人となりを描く。ソクラテスからサルトルまで時代順に紹介。
カントに関する物語が印象に残る。カントの若手研究者が、合コンでカント哲学を紹介するが、みんなドン引き。そこで、友人が彼をトイレに連れて行きいさめる。そして一言「そもそもカントの哲学がわかってるのかよ」。その後彼は、トイレから戻り、みんなの前で、カントの哲学を本当は理解していない、と白状。ある意味シュールでリアルということで場が和む。
これは、作者清水さんの哲学解説本の作者への皮肉かな。
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