2014年7月15日火曜日

Crl:WI (Han) ― チャールス・リバー社のウィスター・ハノーバ

日本で入手できるアウトブレッドラット(その1)です。

日本チャールス・リバーが生産しているウィスターラットは、2種類あります。
ひとつが、このCrl:WI (Han)、もうひとつが、Crlj:WIです。

もともとは、ドイツハノーバのZentral Institut fur Versuchstierzucht (実験動物繁殖中央研究所)のウィスターハノーバ(Han:WIST)に由来します。
このウィスターハノーバラットがスイスのBRL(Biological Resource Laboratories)に移され、Glaxo Wellcomeに供給。

1996年にチャールスリバーUKに導入。
1997年にチャールスリバーUSAに移動。
2007年に日本チャールスリバーに導入。

10週齢体重が、雄で約250g、雌で約180g と小型
生存率は104週で75%程度
平均産子数は9-10匹/腹

安全性、発がん性、老化などの分野で利用されています。

ある物質ががんを作るかどうかをラットを用いて試験します(がん原性試験)。
しかし、がんが体の中にできるには時間がかかります。そのため、使用するラットは長生きの方が試験期間中の歩留りがよく、経済的で、好まれます。

Wistar Hannoverラットは、生存率が2年で約75%と高いので、このような時間のかかる試験(がん、老化など)に適しているとされています。

Hannoverという名前からわかるように、Wistar Hannover ラットは主にヨーロッパにおいて安全性試験等に用いられてきました。このラットを毒性・薬理学分野での安全性試験でもちいる国際標準ラットとするための動きがありました。

しかし、アウトブレッドラットは遺伝的な統御が難しいので、繁殖集団が小さくなると瞬く間に繁殖コロニー間で分岐がおこります(遺伝的浮動を参照)。

そこで、生産コロニー間でラット同士をやりとりし、各コロニーを遺伝的組成を均一化する試みがなされています。この試みのうちチャールスリバー社で行われている遺伝管理方法を、International Genetic Standardization (IGS) といいます。

IGSの目的は、生産過程における近交化を最小限にし、ヘテロ接合性を維持し、コローニー間の分岐を回避することです。

別名
Wistar Han
Wistar Hannover
Hannover Wistar
Crl:WI(Glx/BRL/Han)IGS


参考文献
日本チャールス・リバー株式会社2014総合カタログ
日本クレア株式会社総合カタログ