2014年10月17日金曜日

excel - 2軸グラフ

2軸グラフ

通常、グラフの縦軸はひとつ。
しかし、値の大きく異なる「系列」をひとつのグラフで表すには、もうひとつ軸があった方が便利。
そこで、グラフの右側に軸を追加する。

軸を追加する「系列」を選択
 ↓
右クリック
 ↓
[データ系列の書式設定]
 ↓
[系列のオプション]
 ↓
[使用する軸]
 ↓
第2軸(上/右側)を指定


参考
http://www.relief.jp/itnote/archives/003260.php


2014年10月14日火曜日

神幸祭―平成26年

今年もやってきました吉田地区のお祭り、「神幸祭」です。
今年は、10月12日に今宮社の御神輿が町内を巡りました。


昨年も言いましたが、京都大学は吉田地区にあるので、御神輿がやってきます。
台風の影響が心配されましたが、良い天気でした。







2014年10月10日金曜日

2週齢以下のマウス・ラットの個体識別

2週齢以下(生後14日以下)のマウスやラットの個体識別をする場合があります。

未だ毛が生えそろっていないので、ピクリン酸などによる色素塗付法を用いることができません。
また、耳介も未発達なため、耳パンチ法による個体識別もできません。

そこで、新生児のマウス・ラットを個体識別には、やむを得ない処置として、指先を切断することが行われます。

注意点としては、

  1. 局所麻酔薬を用いる
  2. 片側の後肢の一本の指先のみを切断する
  3. 切断した指先からDNAを抽出し、遺伝子型解析に用いるべき

後肢には、5本の指があります。一本ずつ切断することで、最大10頭を識別できます。

前肢を切断してはいけません。なぜなら、物をつかんだり、毛づくろいする能力を低下させる可能性が高いからです。


参考資料
遺伝子改変マウス作出における洗練(refinement)および削減(reduction):Laboratory Animals 37, Suppl 1, July 2003の訳出; p45

2014年10月9日木曜日

約1日半のずれ

マウスの平均妊娠期間は、約18~19日、ラットでは約20~21日です。

その理由は、ラットでは、マウスに比べ、着床が約1日半遅れるため、とされてます。

着床が完了するのが、マウスでは胎齢6.5日、ラットでは7.75日です。
その後は、ほぼ同じペースで発生します。

ということは、マウスの胎齢と同じ発生段階のラット胎児を得るには、そのマウス胎齢プラス1ないし2日のラット胎児を得る必要があります。

例えば、神経堤の形成は、マウスでは8日、ラットでは10日、中腎管の形成はマウスで9.5-10日、ラットで10.5-11日です。また、体表に毛包が出現するのは、マウスで14日、ラットで15日と言われています。

最後に、いつを胎齢0日とするか、です。
一般的には、膣栓確認日を胎齢0日、としています。

参考資料
実験動物学各論; p21
マウス・ラットの解剖と器官発生 小児外科 29(2):143-152
日本エスエルシー実験動物価格表

2014年9月25日木曜日

SD6割、Wistar3割

実験動物の年間総販売数調査のつづきです。

平成25年度のラットの総販売数は約122万頭でした。
そのうちアウトブレッドラットは約109万頭でした。

その内訳をみてみましょう。

販売数の多い順に、販売数と全体に占める割合を示します。

Sprague-Dawley  70万頭(63%)
Wistar         33万頭(31%)
Wistar-Imamichi   2.7万頭(3%)
Wistar-Hannover  2.4万頭(2%)
Long Evans     1.4万頭(1%)
その他        

日本で販売されるアウトブレッドラットは、ざくっと、6:3でSDとWistarとなるようです。

2014年9月24日水曜日

122万頭

日本におけるラットの販売数が激減しているようです。

公益社団法人日本実験動物協会が「平成25年度実験動物の年間総販売数調査報告書」を出しました。
この調査は昭和60年度から3年に一度、実験動物生産者の年間販売数を調査し、実験動物数の動向を調べるものです。
今回、平成25年度一年間に販売・供給された実験動物の数が公表されました。

調査対象は、実験動物を生産している企業、大学・独立行政法人で、合計43社・機関です。
マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、サル類、ブタ、ヤギ、めん羊、鳥類について調べています。

ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」を実施しているものとしては、ラットの販売数が気になるところです。
さて、そのラットですが、年間の総販売数が122万頭で、前回3年前(平成22年度)に比べ、42.7万頭減(25.9%減)となっています。
122万頭の内訳を以下に示します。
          平成22年度→平成25年度
アウトブレッド: 146万頭→109万頭(25.4%減)
近交系:     15.4万頭→9.6万頭(37.7%減)
ミュータント系: 3.1万頭→3.4万頭(9.1%増)

これらからわかるように、販売数減少の主な要因は、もともと総販売数の大半を占めていたアウトブレッドラットの販売数減少です。

アウトブレッドラットは、薬効試験や安全試験に使用されています。製薬企業の研究所の集約化や閉鎖を反映して、アウトブレッドラットの使用数が減少したものと思われます。

一方、ミュータント系統は利用が増えています。薬効試験を行うにしても安定的な表現型を示すミュータント系で実施する傾向になっているのでしょう。

2014年9月22日月曜日

鴨川2014年9月

約2か月ぶりの投稿です。

昨日の日曜日は大変よい天気でした。
鴨川に行きましたが、ここ2週間雨が降っていないせいか水量がとても少なかったです。
川底の一部が見られます。
荒神橋あたりでサッカー場(後日訂正:テニスコート)の面積ぐらい現れているでしょうか。


2014年7月25日金曜日

Slc:Wistar/ST - 日本エスエルシーのウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その6です)。

Slc:Wistar/STは、日本エスエルシーが生産している2種類のウィスターラットのうちのひとつです。
もう1種類は、Slc:Wistarというのもでした。

1974年、東京大学医科学研究所から導入されました。

10週齢で、雄300g前後、雌200g弱と比較的大型です。

Slc:WistarはかなりF344ラットと似た表現型を示します。
しかし、このSlc:Wistar/STはいわゆる”ウィスターラット”で、体型が大型、性質温順です。

STの由来は、SLC Takagi であると耳にしたことがありますが、本当のところは知りません(Takagiは日本エスエルシー社の経営者の苗字です)。

参考資料
日本エスエルシー株式会社総合カタログ

2014年7月24日木曜日

Slc:Wistar - 日本エスエルシーのウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その5)です。

Slc:Wistarは日本エスエルシー社が生産しているウィスターラットです。

1968年に東京大学医科学研究所から導入されました。

10週齢で、雄250g前後、雌150g前後と比較的小型です。

このSlc:Wistarラットは確かにアウトブレッドラットですが、その遺伝的組成はF344(Fischer)ラットと非常に似ていることが以前から指摘されています。
例えば、成長曲線、生存率、腫瘍の発生部位や頻度などがF344ラットと類似していることが指摘されています。また、Slc:Wistarで得られた白血病細胞がF344ラットに移植できることから免疫系の類似点も指摘されています。

毒性学の分野では、Slc:WistarはF344に非常に似ているということはよく知られているようです。
内閣府の食品安全委員会の農薬専門調査会評価第二部会の委員のひとりがこんなことをおっしゃています。

「・・・このSlc:WistarはもともとFischerラットですので、・・・」
食品安全委員会 農薬専門調査会 評価第二部 第21回会合議事録 20ページ


我々の研究から、ゲノムレベルでも、Slc:WsitarとF344ラットが非常に似ていることが判明しつつあります。

参考資料
日本エスエルシー株式会社カタログ
Maekawa et al., J Toxicol Sci 8:279-290, 1983
Tayama et al., Exp Anim 35:65-76, 1986
Yagami et al., Exp Anim 40:407-410, 1991


2014年7月23日水曜日

excel 日付の書式(曜日の表示)

エクセルの日付に曜日を表示するには、セルの書式を「ユーザー定義」する。

曜日を表示する書式記号

aaa: 日~土
aaaa: 日曜日~土曜日

ddd: sun-sat
dddd: Sunday - Saturday


参考
http://www.relief.jp/itnote/archives/000018.php

2014年7月22日火曜日

Jcl:Wistar ― 日本クレアのウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その4)です。

Jcl:Wistarは日本クレア社が生産している2種類のウィスターラットのうちのひとつです。
もう1種類は、BrlHan:WIST@Jcl(GALAS)というものでした。

Jcl:WistarはWistar研究所(米国)に由来します。
1970年にCarworth Farm(英国)より導入されました。

カタログ等によりますと
12週齢で、雄300g前後、雌200g前後。
中型。

各種要因に対して優れた感受性があり、特に学習能力に優れている。
行動薬理、毒性、薬理、薬効試験や安全性試験など、幅広い分野の研究に使用されている。

104週生存率は、雄で75.4%、雌で44.8%

導入後、40年以上経過していますので、ある程度近交化が進んでいると思われます。
以前、我々はこのJcl:Wistarラットでは、ピンクアイダイリューションという毛色変異遺伝子がホモに固定していることを見つけました(Kuramoto et al, Mammalian Genome 2005)。
Jcl:Wistarはアルビノなので、毛色変異を持っていてもその効果が表現型として見えません。
ところが、有色のラットと交配するとこの毛色変異の効果が表に現れます。

我々がこのことに気付いたのは偶然でした。
Jcl:Wistar由来のアルビノのKaken Hairless Rat (KHR)というラットと有色のBrown Norway (BN) ラットとの交配実験を行ったときに、毛の色が薄くて、ピンク色の眼をしたラットが生まれてきたのです。
BNラットはピンクアイダイリューション変異を持っていないので、KHRラットがこの変異を持っていることは確実でした。そして、その由来となったJcl:Wistarまでもがピンクアイダイリューション変異を持っていることが判明したのです。


参考資料
日本クレア株式会社総合カタログ
日本クレア株式会社ホームページ

2014年7月18日金曜日

BrlHan:WIST@Jcl(GALAS) - 日本クレアのウィスターハノーバ

日本で入手できるアウトブレッドラット(その3)です。

BrlHan:WIST@Jcl(GALAS)は日本クレアが生産しているウィスターハノーバラットです。

由来は、他社のウィスターハノーバラットと同様です。

Zentral Institut fur Versuchstierzucht (ハノーバ、ドイツ)に由来。
1989年に156ペアがInstitute for Biomedical Research (IBM)へ導入
(IBMはその後、BRL Ltd、RCC Ltdと改名され現在へ)
1998年にRCCからGALASメンバーへ分与

GALASとは、Global Alliance for Laboratory Animal Standardizationの略で、実験動物標準化のための世界協定です。この協定は、1998年10月、日本クレア、RCC(スイス)、M&B(デンマーク)、Taconic Farm(米国)の4社によってつくられました。この4社がGALASメンバーです。

日欧米の三極で使用されるウィスターハノーバの品質を、同一の生産・供給体制を構築することで保証しようというものです。

GALASメンバーが生産するウィスターハノーバの名前は以下の通りです。
日本クレア:BrlHan:WIST@Jcl(GALAS)
RCC:BrlHan:WIST@Brl(GALAS)
M&B:BrlHan:WIST@Mol(GALAS)
Taconic Farms:BrlHan:WIST@Tac(GALAS)


参考資料
日本クレア株式会社総合カタログ
Global Alliance for Laboratory Animal Standardization (GALAS)について


2014年7月16日水曜日

Crlj:WI ― チャールス・リバー社のウィスター

日本で入手できるアウトブレッドラット(その2)です。

Crlj:WIは日本チャールスリバー社が生産している2種類のウィスターラットのうちのひとつです。
もう1種類は、Crl:WI(Han)というウィスターハノーバラットというものでした。

このラットはWistar研究所(米国)に由来します。
1947年にWistar InstituteからScientific Products Farm (チャールスリバーUKの前身)へ導入
1975年にチャールスリバーUSAに移動
1981年に日本チャールス・リバーに導入
水腎症の発生率が低いという理由で選ばれたとのこです。

10週齢体重が、雄で310-410g、雌で200-270g と比較的大型
繁殖性良好
取り扱い容易

安全性、がん、神経系、循環器系、老化、免疫、代謝など様々な分野で利用されています。

ウィスターラットと呼ばれているものでも、種類によってその特性は様々です。
日本には、a) 戦前に導入されたウィスターラット、b) 戦後に導入されたウィスターラット、 c) ハノーバーウィスターラット の大きく分けて3つの種類があります、というかありました。

ありました、というのは、戦前に導入されたウィスターラットは、主に大学等で維持されており、現在では、アウトブレッドとして維持されているものはないためです。

というわけで、現在、日本で利用できるウィスターラットは、いわゆる”ウィスターラット”(戦後派)と比較的最近になって導入された”ウィスターハノーバ”となります。

各実験動物生産業者も、この2ラインナップを生産・販売していることが多いです。

別名
Crlj:Wistar


参考資料
日本チャールス・リバー株式会社2014総合カタログ
Charles River Laboratories ホームページ




2014年7月15日火曜日

Crl:WI (Han) ― チャールス・リバー社のウィスター・ハノーバ

日本で入手できるアウトブレッドラット(その1)です。

日本チャールス・リバーが生産しているウィスターラットは、2種類あります。
ひとつが、このCrl:WI (Han)、もうひとつが、Crlj:WIです。

もともとは、ドイツハノーバのZentral Institut fur Versuchstierzucht (実験動物繁殖中央研究所)のウィスターハノーバ(Han:WIST)に由来します。
このウィスターハノーバラットがスイスのBRL(Biological Resource Laboratories)に移され、Glaxo Wellcomeに供給。

1996年にチャールスリバーUKに導入。
1997年にチャールスリバーUSAに移動。
2007年に日本チャールスリバーに導入。

10週齢体重が、雄で約250g、雌で約180g と小型
生存率は104週で75%程度
平均産子数は9-10匹/腹

安全性、発がん性、老化などの分野で利用されています。

ある物質ががんを作るかどうかをラットを用いて試験します(がん原性試験)。
しかし、がんが体の中にできるには時間がかかります。そのため、使用するラットは長生きの方が試験期間中の歩留りがよく、経済的で、好まれます。

Wistar Hannoverラットは、生存率が2年で約75%と高いので、このような時間のかかる試験(がん、老化など)に適しているとされています。

Hannoverという名前からわかるように、Wistar Hannover ラットは主にヨーロッパにおいて安全性試験等に用いられてきました。このラットを毒性・薬理学分野での安全性試験でもちいる国際標準ラットとするための動きがありました。

しかし、アウトブレッドラットは遺伝的な統御が難しいので、繁殖集団が小さくなると瞬く間に繁殖コロニー間で分岐がおこります(遺伝的浮動を参照)。

そこで、生産コロニー間でラット同士をやりとりし、各コロニーを遺伝的組成を均一化する試みがなされています。この試みのうちチャールスリバー社で行われている遺伝管理方法を、International Genetic Standardization (IGS) といいます。

IGSの目的は、生産過程における近交化を最小限にし、ヘテロ接合性を維持し、コローニー間の分岐を回避することです。

別名
Wistar Han
Wistar Hannover
Hannover Wistar
Crl:WI(Glx/BRL/Han)IGS


参考文献
日本チャールス・リバー株式会社2014総合カタログ
日本クレア株式会社総合カタログ

2014年7月14日月曜日

アウトブレッドとは、

ある集団が一定の大きさで維持されている実験動物では、「遺伝的浮動」によって、遺伝子組成に変化が出る可能性について述べました。

実験動物関連で、「遺伝的浮動」の影響を受けやすい集団とは、どのような集団でしょう。
条件としては、集団のサイズが限定されており、ヘテロ性が残存している集団です。

それは、アウトブレッド(outbred)と呼ばれる集団です。

アウトブレッドとは、インブレッド(inbred; 近交系)に対する語で、”遺伝的に明確ではない”集団のことをいいます。
例えば、マウスではCD-1, ICR, ddYなど、ラットではWistar, SDなどです。

ヘテロ性が残存していると考えられるので、雑種強勢(hybrid vigor)を示します。例えば、寿命が長い、病気に強い、性成熟が早い、産子数が多い、新生児の死亡率が低い、速い成長、サイズが大きいなどの形質を示します。

近交系に比べ、生産効率が良いので、安価です。そのため、様々な分野で汎用されています。

アウトブレッドの交配は、人為的な選抜を極力避けるよう、ランダム交配によります。しかし、本当にランダムな交配というのは不可能です。そこで、ローテンションシステムという方法で交配します。

要するに、世代を経ても、遺伝子頻度が変化しないように、交配方法を工夫します。
「遺伝的浮動」は避けられないものですが、その影響を極力小さくするために集団のサイズを大きくしています。

参考文献
Mouse Genetics concepts and applications p42

2014年7月13日日曜日

遺伝的浮動, random drift, genetic drift

集団の遺伝子頻度が世代間で偶然に変動することを「遺伝的浮動」といいます。

「遺伝的浮動」は、次世代に寄与する配偶子が無作為に抽出されることによって起こるので、遺伝子頻度は世代ごとに変化し、その変化の方向性もありません。

変化の程度は、集団のサイズが小さいほど大きくなります。
例えば、N個体からなる集団であれば、集団の平均ヘテロ接合体頻度は、1/2Nずつ減少します。

100個体からなる集団であれば、一世代ごとに1/200=0.5%づつヘテロ接合体の頻度は減少しますが、10個体からなる集団であれば、5%づつヘテロ接合体の頻度は減少します。

つまり、100個体であれば、0.5%ずつホモ接合体が現れるのに対し、わずか10個体の集団であれば毎世代5%ずつホモ接合体が現れることになります。

遺伝子頻度の変化にも方向性がないわけですから、集団が小さければ、数世代後には思いよらない遺伝子頻度をもった(それもホモ接合体の多い)集団に変化(化けている)可能性があります。

ある集団が一定の大きさで維持されている実験動物に当てはめてみましょう。
この場合、この集団の遺伝的組成は、数年前と現在とでは異なっている可能性があります。
そして、実験動物の遺伝的な組成は、表現型に影響を与えるものですから、実験の再現性にも影響が出てくる可能性があります。


参考文献岩波生物学辞典第4版 p81
Introduction of quantitative genetics (forth edition) p48



2014年6月18日水曜日

辞書持込み不可

平成27年度の京都大学大学院医学研究科医科学専攻修士課程の学生要項が発表されました。
http://www.med.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2014/05/ikagaku_m_h27.pdf

この医科学専攻修士課程は、医学部以外の学部教育を受けた学生に、医科学分野における基礎知識の習得と研究のトレーニングの場を提供し、幅広い視野をもつ医科学研究者を養成することを目的としています。

我々の研究室でも学生を募集していますので、ご興味のある方は、HPをご覧ください。
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/Kuramoto/home.htm

出願期間は、平成26年7月15日~17日
試験日は、平成26年8月26日(火)です。

昨年までは、外国語の試験において、辞書の持ち込みが可能でした。
しかし、今年からは、辞書の持ち込みが不可となりました。

2014年5月28日水曜日

爬虫類館のラット

最も古いアウトブレッドストックとして、パリ植物園で飼育されてたラットがいます。

1856年に発行された雑誌"Magasin Pittoresque"3月号の75-76ページに記事があります。

この記事をブリュッセルのルーバン大学医学部のBazin博士がRat News Letter (1988) で紹介しています。雑誌の記事はフランス語で書かれているので、内容を英語に翻訳し紹介しています。

それでは、1850年ごろ(今から160年ほど前)、パリでの飼育ラットの状況を見てみましょう。

当時、パリの植物園内で飼育されていた爬虫類の餌としてアルビノマウスと黒白まだらのラットが飼育されていました。これらのマウスやラットは、生餌として、あるいは屠殺された直後に爬虫類に与えられました。
爬虫類の担当者は、主に、黒白まだらのラット(黒い頭、背部に黒いストライプ、他の部分は白)を繁殖していました。これらのラットは繁殖力が旺盛で、1年に8産とれることもあり、1産あたりの産子も10-12匹であったようです。ラットたちがかじらないように、金属を貼った木製のケージで繁殖が行われました。

パリ植物園は、1635年に王立の薬草園として開設され、1793年に自然史博物館となりました。そのころから、博物館内の動物園では、爬虫類が飼育されていたと想像されます。その爬虫類を飼育するためにマウスやラットが繁殖されていたのでしょう。
そうすると、1850年よりもかなり以前から、パリ植物園ではラットが飼育されていたと思われます。
そのため、パリ植物園の頭巾斑ラットストックが、最古のストックとして紹介されているのです。

Bazin博士は、1988年にパリ植物園の爬虫類館を訪れ、この白黒まだらラット譲り受ました。
そして、研究室に持ち帰り、それらをもとに近交系を確立しました。
現在では、PAR系統として知られています。PAR系統は野生由来のBN系統と並んで、実験用ラット系統のなかで、最も遺伝的に離れた系統であることが報告されています。

パリ植物園は現在でもパリにあります。そこには動物園があり爬虫類も飼育されています。
今でも、ラットが飼育されているのでしょうか?いつか訪ねてみたいものです。

参考文献
The Laboratory Rat, 99 33.
Rat News Letter 20: 14, 1988.
Genome Res. 7: 262-267, 1997.

2014年5月27日火曜日

妻の旧姓をつけられたラット

ウィスターラットと並んでよく利用されるアウトブレッドラットにSDラットというのがあります。
SDとは、Sprague-Dawleyの略です。

今回は、SDラットの由来を見てみましょう。

オリジナルのストックは、1925年、ウィスコンシン大学の物理化学者である Robert Worthington Dawley 氏によって確立されました。

Spragueといのは、彼の最初の妻の旧姓で、自分の名字と併せて、Sprague-Dawleyと名付けたとのことです。

彼は、ウィスコンシン州のマディソンに Sprague-Dawley Inc.という会社を設立し、ラットの販売を始めました。Dawley氏の死後(1949年)、この会社は、ARS/Sprague-Dawley Companyとなり、今日では、Harlan Sprague-Dawleyとして世界的にも有名な実験動物供給元となっています。

さて、SDラットの由来です。

オリジナルのストックは、非常に大柄で元気な頭巾斑の雄ラット(ただし、アルビノをヘテロにもつ)に由来します。この雄ラットとアルビノの雌ラットを交配し、得られた産子のうち雌の産子に戻し交配をしました。このような戻し交配を7回繰り返し、アルビノのラットを用いて、複数ラインで、近交化を図りました。その中から、10頭を選び交雑しました。選抜の基準は、哺乳能力が高い、成長が早い、健康、気性がよい、亜ヒ酸(arsenic trioxide)に耐性があることです。

最初の雄ラットの由来は不明です。
交配に用いた雌ラットの由来は、Douredoure strainというもので、おそらくウィスター研究所に由来すると思われます。

現在でも、SDラットは複数の業者から購入可能です。
いずれの業者のカタログにも、SDラットは、性質温順、発育良好、繁殖良好、体型大型と紹介されています。つまり、選抜された特性を引き継いでいるのです。
ということは、現在のSDラットも亜ヒ酸に耐性があると想像されます。

参考文献
The Laboratory Rat: pp 32.
Rat Quality - A Consideration of Heredity, Diet and Disease: pp 86-97.







2014年4月30日水曜日

ラットの唾液腺

ラット頸部の皮下組織を観察する機会がありました。

組織としては、腹側から背側に向かって、顎下リンパ節、耳下腺、舌下腺、顎下腺があります。



  1. 顎下リンパ節 (lymphonodi submandibulares)
    黄色っぽい。
    このラットでは少し腫れています。
  2. 耳下腺 (glandula parotis)
    透明でゲル状の脂肪のような組織に白い腺がみえます。
    この写真では背部側にめくられて見にくいです。
  3. 舌下腺 (glandula sublingualis)
    顎下腺の最頭部側に位置します。
    顎下腺と区別がつけにくいです。
  4. 顎下腺 (glandula mandibularis)
    複数の葉状からなる組織です。
    ピンク色っぽい。
  5. 涙腺 (glandula lacrimalis)
    耳介の皮下直下にあります。
    茶色っぽい。
耳下腺、舌下腺、顎下腺をあわせて唾液腺 (salivary gland) といいます。

参考文献
The Laboratory Rat
Editied by Georg J Krinke.
Academic Press

2014年4月2日水曜日

土をこねて物の形をつくる。穴に鼠がはいる様子。

理化学研究所が「STAP細胞」作製を報告した論文中に、捏造と改竄という意図的な不正があったとする最終報告を出しました。

『広辞苑』によりますと、
「捏造」とは、事実でないことを事実のようにこしらえて言うこと。土などをこねてものの形を作ること。
「改竄」とは、字句などを改めなおすこと。多く不当に改める場合に用いられる。

以下、『新字源』によりますと、
捏という漢字は、ねばついた土に手を加えて「こねる」、からめるという意。
これから派生して、
1) こねる、からめる。
2) こじつける、でっちあげる。
3) からめる、にぎる。
4) おす、おさえる、おさえつける。

竄という漢字は、穴に鼠が隠れるさま、から逃げ隠れるという意。
1) かくれる、かくす。
2) のがれる、にげる。
3) はいる、あなにはいる。
4) しみいる、香などがしみこむ。
5) ひそか、かすか。
6) はなす、遠方に追放する、流竄、竄逐。
7) あらためる、文字をかえる、竄改、改竄。

「捏」が、手を使い、土をこねて、形のないものから形のあるものへ作り上げるという意味を示すことは、イメージしやすいです。

「竄」ですが、穴と鼠の組合せですので、隠れる、逃れるというのは、イメージできます。
そこから、穴に入る→しみいる→しみいったものがかすかに出てくる→放つ、追放する→もとのものとは違ったものになる、というような意味の展開でしょうか?

鼠(ねずみ)関連の漢字だけに気になります。

2014年3月18日火曜日

ケージ交換

実験動物のマウスやラットは、ケージという箱状の入れ物で飼育されています。
ケージは、アルミやプラスチックからできています。
フタは、金属製で格子状となっており、固形試料を入れるためにくぼみがつくられています。
マウスやラットは、格子の隙間から餌をかじるわけです。

ケージには、パルプ製あるいは木製のチップが敷き詰められています。
これらを床敷きといいます。
床敷きは、糞尿の拡散防止、巣材となり、ケージの居住性を高めます。

マウスやラットは、ケージ内で糞尿をします。1週間程度で、床敷きが汚れてきます。
そこで、週に一度、ケージとそのフタの交換を行います。これをケージ交換といいます。

ケージ交換時の3大留意点
  1. 動物の観察
    ケージ交換は、動物に触れる絶好の機会です。
    動物の健康状態を観察します。
  2. 動物を逃がさない
    動物が逃げた場合は、捕獲するまでその場を離れてはなりません。
    まわりの人に呼び掛けて、必ず捕獲しましょう。
  3. 餌と水を与える
    餌と水を十分に与えましょう。
    ケージ交換は、動物の”住”と”食”を保障するものです。
    水は、自動給水と給水ビンによるものがあります。
    給水ビンの場合は、清潔な給水ビンに新鮮な水を入れて与えます。


2014年3月5日水曜日

[excel] 日付に関する関数(1)基礎編

<知っておくこと>

  • 日付は、固有のシリアル値をもつ
  • シリアル値から、日付に関する情報(年、月、日、曜日)を得る
  • だから、まずはシリアル値を得てから、関数を利用する

<関数:シリアル値から数値へ>

  • day: シリアル値から日の数値を返す。1~31の整数。
  • month: シリアル値から月の数値を返す。1~12の整数
  • year: シリアル値から年の数値を返す。1900~9999の整数。
  • weekday: シリアル値から曜日の数値を返す

<関数:数値からシリアル値へ>
  • date: 第1引数=年の数値、第2引数=月の数値、第3引数=日の数値
  • 第2引数=0はひと月前、第3引数=0は一日前、のシリアル値を返す。
  1. =date(2014,1,1)なら、2014/1/1のシリアル値
  2. =date(2014,1,0)なら、2014/1/1の一日前なので、2013/12/31のシリアル値。
  3. =date(2014,0,1)なら、2014/1/1のひと月前なので、2013/12/1のシリアル値。
  4. =date(2014,0,0)なら、2014/1/1のひと月前の一日前なので、2013/11/30のシリアル値。

2014年3月4日火曜日

哲学入門のための哲学者入門

『哲学個人授業』
<殺し文句>から入る哲学入門
鷲田清一、永江朗
2008年2月6日初版
バジリコ株式会社

『考えすぎた人』
お笑い哲学者列伝
清水義範
2013年6月20日発行
新潮社


前者は、フリーライター永江朗が元阪大学長で哲学者の鷲田清一の個人授業を受けるという設定。毎回、一人の哲学者とその著作から、心が震えるような言葉、グッとくるフレーズを選び、そのフレーズの前後の文章も含めて、言葉の意味やその哲学者の考え方を鷲田さんが解説するというもの。

いままでもやもやとしていたものが、哲学書の中の言葉、文句に出会うことで、一挙に結晶化する、そんな経験が哲学書にはある。このように鷲田さんは述べられています。

この本の中で紹介されている言葉、文句のなかで、私が一番グッときたものは、ロラン・バルトの『テクストの快楽』より、

精神分析が的確にいっているように、エロティックなのは間歇である。二つの衣服(パンタロンとセーター)、二つの縁(半ば開いた肌着、手袋と袖)の間にちらちら見える肌の間歇。誘惑的なのはこおのちらちら見えることそれ自体である。更にいいかえれば、出現―消滅の演出である。

確かに縁、境界には眼がいきますよね。眼から入ってくる膨大な情報を短時間で処理するには、境界を第一に認識し、フラットな部分はすっ飛ばすというような機構が人間の脳には備わっているといわれています。衣服でいえば、肌との境目もそうですが、色の境目、素材の境目(アクセサリーや時計)に自然と眼がいきますよね。


2冊目は、様々な作家の文体をまねてユーモア小説を書く清水さんの小説。哲学者12人を選び、その哲学というより、人となりを描く。ソクラテスからサルトルまで時代順に紹介。

カントに関する物語が印象に残る。カントの若手研究者が、合コンでカント哲学を紹介するが、みんなドン引き。そこで、友人が彼をトイレに連れて行きいさめる。そして一言「そもそもカントの哲学がわかってるのかよ」。その後彼は、トイレから戻り、みんなの前で、カントの哲学を本当は理解していない、と白状。ある意味シュールでリアルということで場が和む。
これは、作者清水さんの哲学解説本の作者への皮肉かな。

2014年2月21日金曜日

[excel] シート名を取得

<知っておくこと>

  • ファイル名は、文字列である。
  • ファイル名は、絶対パス+ファイル名+シート名 で構成される。
  • ファイル名は、"["と"]"で囲まれる。例:[ファイル名]
  • シート名は、ファイル名の後につづく。例:["ファイル名"]"シート名"


<戦略>

  • RIGHT関数を用いて、ファイル名の右端のシート名を返す。
  • (シート名の文字数)=(ファイル名の文字数)-("]"までの文字数)

<使用する関数>

  • CELL関数, "filename":ファイル名の絶対パスを返す
  • LEN関数:文字列の文字数を返す
  • FIND関数:指定された文字列が最初に現れる位置を左端から数えその番号を返す
  • RIGHT関数:文字列の右端から指定された文字数を返す

<方法>
=RIGHT(第1引数,第2引数)
第1引数 → CELL("filename", A1)
第2引数 → LEN(CELL("filename", A1))-FIND("]",CELL("filename", A1))

参考:http://www.relief.jp/itnote/archives/001079.php

2014年2月15日土曜日

[excel] 「テーブルとして書式設定」を解除する

  1. 設定しているセルを選択する
  2. リボンの「デザイン」を選択
  3. 「ツール」の「範囲に変更」を選択する
  4. 「テーブルを標準のの範囲に変換しますか?」とメッセージが出るので「はい」を選択

2014年2月11日火曜日

ドイツのd、伝染病研究所のd、予防衛生研究所のY

ddYマウスという日本で開発されたアウトブレッド(非近交系)マウスがいます。
薬効、薬理、毒性などさまざまな試験研究に利用されています。
このマウスの由来を記載した文章を見つけましたので、転記します。

『実験動物飼育管理の実際』
小山良修(東京女子医大教授)
今泉清(予研獣疫部長)
鈴木潔(伝研獣医学部)
田中利男(日本モンキーセンター)
1963年
医学書院

Ⅰ.飼育管理
1.マウス
1)まえがき
a. 種類・系統
”現在わが国で一番広く用いられているいわゆるdd系は秦佐八郎が、ドイツから持ちかえってサルバルサン検定に使用していたものが、旧満鉄衛生研究所・安東洪次のもとに伝わり、これが戦時中さらに伝染病研究所に送られて、封鎖集団 (closed colony)内での雑交配(random mating)がつづけられて来たものである。さらに昭和26年以来この集団をもとにして積極的に繁殖が再開され、dd系という名で伝染病研究所各研究部・東京大学に供給されるようになり、また各所にわたって繁殖され、繁殖箇所頭文字をつけてddD(伝染病研究所)、ddN(実験動物中央研究所)、ddO(大阪大学微生物病研究所)、ddT(武田薬品工業・光工場)、ddY(予防衛生研究所)などと呼ばれるようになった。したがって、dd系なるものは一般に近交系ではないが、一部では近交20代をすぎた近交系ddを保持しているところもある。”

伝染病研究所は、現在の東京大学医科学研究所。
予防衛生研究所は、現在の国立感染症研究所。

予研で開発された近交系DDYは、国立感染症研究所の獣医科学部実験動物開発室が移行した先の、医薬基盤研究所実験動物研究資源バンクから利用できます。



2014年2月2日日曜日

ラットでも、遺伝子改変の時代へ

平成26年3月31日(金)、午後1時より、京都大学百周年時計台記念館にて、第7回ラットリソースリサーチ研究会が開催されました。
この研究会は、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」が主催する研究会で、ラットコミュニティの活性化を目的としています。

当日は、快晴、この時期には珍しいぐらい暖かい日でした。



参加者数は、86名でした。
発表演題8題のうち、4題が遺伝子改変ラットを用いた研究に関するものでした。
ラットにおいても、いよいよ遺伝子改変の時代に入ったと実感させる研究会でした。



開催風景はこちら

http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/NBR/RRR7thpics_jp.aspx

ご講演いただいた先生方、参加者のみなさま、ありがとうございました。

2014年1月26日日曜日

歴史をよみがえらせる新たな方法

『HHhH プラハ、1942年』
ローラン・ビネ
高橋啓訳
2009
2013628日 日本語版初版
東京創元社

1942527日、プラハで、ナチによるユダヤ人大量虐殺の立案者かつ責任者であったラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件がおこった。それは、ロンドンへ亡命していたチェコ政府が起こりこんだ二入の青年パラシュート部隊員によって決行された。

この本では、この暗殺事件を、信頼できる資料に基づいて、現代によみがえらせる。
そして、その方法(書き方)が、これまでの歴史小説にはみられない様式である。これが、この本の最大の特徴だと思う。

第一に、本文377ページで、257の章。ひとつひとつの章が短く、端的。記録的、日記的。
第二に、事実をできるだけ忠実に再現しようと努めている。
第三に、二番目とも関連するが、登場人物の会話については、一字一句正確で信頼のおける資料(オーディ資料、ビデオ資料、速記資料)に基づいて記載。その他の部分は、創作とあらじめ断っている。

このように書くと、学術論文のような堅苦しいイメージをもつかもしれませんが、とても、読みやすい文章で臨場感があふれています。また、ひとつひとつの出来事が、ほぼ時系列に紹介されていくので、ブログを読んでいるような感覚を覚えました。

一般的に、歴史の記述において、その時代の事実を再現することは困難です。記録、遺物、回想などがあったとしても、細部(記録と記録の間)を埋めるのは、想像力を働かせるしかありません。
なかでも、会話を再現することは、非常に困難です。しかし、歴史物語では、物語を生き生きとさせるために、登場人物に会話をさせます。ただし、歴史上の人物の肉声が残っていることは通常ありませんから、作者が創作することになります。そのため、歴史上の人物の声は作家自身の声に似てしまいます。つまり、歴史小説には、歴史的事件を題材としているだけで、その作者の主張、その時代の主張が、紛れ込んでしまいます。

HHhH』の作者は、自身の主張を織り込ませず、この暗殺事件を現代によみがえらせました。そのため様式がこれまでの、歴史小説にないものとなりました。「傑作小説というよりは、偉大な書物と呼びたい」と称賛されたことからも、この本(書物)の特殊性が表されていると思います。

私にとっての歴史小説は、司馬遼太郎の「龍馬がゆく」です。今思うと、司馬さんの思いや、時代の雰囲気(高度成長時代)がかなり入っていたのでしょう。

2014年1月19日日曜日

「ソト」にいるがゆえに関心が払われない実験動物

『日本の動物観-人と動物の関係史』
石田戢、濱野佐代子、花園誠、瀬戸口明久
東京大学出版会
2013年3月15日初版

日本人の動物観を、ペット、産業動物、野生動物、展示動物の観点から考察した書。
日本人は、ヒトと動物の間に断絶はなく、連続性をみている、とする。例えば、人が動物になったり、動物が人に化けたりする。このような昔話が多数存在する。それゆえ、人を中心とした「ウチ」とその周辺の「ソト」と厳密に使い分ける。動物は、「ウチ」から「ソト」へ、ペット、家畜、野生動物の順に配置される。

ペットは、室内飼いが多くなり、今や、「ウチ」のヒト、つまり家族となった。そこでコンパニオンアニマルと呼ばれる。
家畜などの産業動物は、以前は零細に飼育されていたが、今や大規模に飼育される。効率性が優先されるので、厳密に管理されており、もはや部外者は飼育の様子を見ることは難しい。そして、徐々に「ソト」の動物となってきた。その最たるものは、実験動物。実験動物はその飼育・繁殖が外部の者にはほとんどまったくといっていいほどわからない。また、話題にのぼることもない。そして、普段、見ることも触れることもないので、一般の人にとっては、関心がわかない。
野生動物は、もっとも「ソト」に存在する。まったくもってうかがい知れない世界に住んでいるので、人に害を及ぼさない限り、人は基本的に無関心。

動物実験に関しては、一般の人々がどのような関心をもっているか、気になるところです。日本にも、動物実験を行っているところがあり、それに反対する方々もいます。法律も制定されていますが、国民的に話題にのぼることはほとんどありません。そのことが、私にはずっと疑問でしたが、この本を読んで少しわかったようなきがしました。一般の日本人は、動物実験なんて見たこともない(見ようと思っても見ることはほぼ不可能)。実際、動物実験の現場は幾重にも隔離され、遠い遠い「ソト」となってしまっています。

終章での一文が気になります。「実験動物への倫理的取り扱いは、動物福祉運動と動物実験の実施者である企業・研究者との内輪の対立とみられており、それゆえに動物実験への制約はよりシビアになっていくと思われる」

2014年1月14日火曜日

養鼠家と狂歌師のコラボ

『日本の動物観―人と動物の関係史』という本の中で、『養鼠玉のかけはし』に関する学術論文があることを知りました。

「江戸時代後期上方における鼠飼育と奇品の産出―『養鼠玉のかけはし』を中心に―」というものです。東北大学東北アジア研究センターの安田容子さんが、『国際文化研究』という雑誌の16巻205-218ページ(2010年3月31日)で発表されています。
http://ci.nii.ac.jp/els/110007590505.pdf?id=ART0009409175&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1389681286&cp=


私もラットを研究している立場から、『養鼠玉のかけはし』に関する小論を2009年に『ビオフィリア』誌に発表しています。安田さんは、人と動物の関係という視点から、『養鼠玉のかけはし』に注目されたようです。江戸時代の出版に関しては、よくご存知のようで、私がわからなかった『養鼠玉のかけはし』の出版に関することについては、詳しく書かれています。

それによると、作者の春帆堂主人とは、大坂島之内の松原町の春木幸次という人物。
版元は、江戸の山金堂(山崎金兵衛)、大坂の柏原屋(荒木佐兵衛)と和泉屋(辻分助)の三書肆とあるが、公の出版願いは、和泉屋分助が安永3年(1773年)4月に出願している。

また、『養鼠玉のかけはし』の制作には、当時の大阪で活躍していた絵師、彫師、狂歌師がかかわっている。
例えば、絵師の皎天斎主人とは、大坂狩野派の橘国雄のことで、宝暦年間から天明5年(1756-1785)の間に絵本挿絵を中心に活躍していた。
彫師の一人である藤村善右衛門は、当時の大坂を代表する彫師であった。
狂歌師の一本亭芙蓉花は、当時の上方狂歌三派の一つである一本亭社を率いており、俳諧師の蕪村一門とも交流があった。
さらに、芙蓉花以外にも、この一派を構成する門人、高井守由、小出朶雲、平山呉山などが狂歌をよせている。また、狂歌の賛には、奇品鼠の名称だけでなく、その鼠の珍しさや高価さ、鼠の芸が詠み込まれている。このようなことから、一本亭社の主要な門人であった狂歌師たちが集まって、養鼠家たちの奇品鼠の品評会と同時に、狂歌会を催したと推測している。

私は、『養鼠玉のかけはし』に出会った時から、鼠の飼育本としての価値を見出していました。しかし、安田さんは、飼育本としてだけでなく、絵本、さらには、一本亭社の狂歌選集としての価値も見出されたようです。

奇品鼠を飼うことも、狂歌を読むことも、当時は裕福人びとの趣味だったのでしょう。当時流行の狂歌師たちを、当時流行の奇品鼠の品評会に招待し、歌を詠ませ、そして、本を出版する。このようなことを考えた仕掛け人がいて、養鼠家と狂歌師のコラボがなされたと想像します。

2014年1月9日木曜日

第7回ラットリソースリサーチ研究会(平成26年1月31日)

今月末(1月31日)に、京都大学百周年時計台記念館にて、第7回ラットリソースリサーチ研究会を開催します。

これは、私が研究代表者をしているナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」が毎年この時期に主催している研究会です。その目的は、実験用ラットに関する最新のリソース開発状況の紹介とそれらラットリソースを用いた生物医学研究の紹介です。

近年、ZFN, TALENそしてCrisper/Cas9といったゲノム編集技術がラットにも適用できるようになりました。今後、遺伝子改変ラットの作製が加速化されると期待されています。遺伝子改変ラットが増大すると、これらのラットを保存し提供することが求められます。そのため、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」の重要性はますます高まると考えています。

今年の研究会の一押しは、Crisper/Cas9システムによる遺伝子改変ラットの開発に関する演題ではないでしょうか。

詳細はこちら↓


2014年1月6日月曜日

パワースポット吉田山

新年あけましておめでとうございます。
人生で47年目の年となります。

今年のお正月は、実家で元日から3日まで過ごしました。
4日に吉田神社へ初詣、その後、竹中稲荷、宗忠神社、真如堂と、神社、お寺を”はしご”しました。

吉田山は、東山の峰々から離れて、独立峰のようにこんもりとしており、京都平野のアクセントになっています。
また、京都平野の北東(鬼門)に位置しています。

その場所と形から、宗教的な立地条件があったと思います。
その証拠に、東西約500メートル、南北約1キロのなかに、吉田神社をはじめ、岡崎神社、宗忠神社、竹中稲荷などの神社や、真如堂、今戒光明寺(黒谷)などのお寺、それに、天皇陵が二墓あります。

私には来ていませんが、来る人には来るでしょう。
確実に、パワースポットです。

2014年1月5日日曜日

平成26年(2014年)の仕事始めにあたり

平成26年(2014年)の仕事始めにあたり所信を述べます。

京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設は、医学研究科における研究支援を担っていいます。支援業務は、研究活動に比べると地味なものですが、研究を進める上でなくてはならないものです。その重要性は、医学研究科内の方々がお認めになっていると思います。

動物実験施設を長年使用している医学研究科内の先生方は、この動物実験施設が標準であり、「あたりまえ」ですが、当施設の設備・管理レベルは、他部局、他大学に比べて決して劣るものではありません。他の動物実験施設を利用してはじめて、この動物実験施設の良さが認識されることもあるようです。

現場においては、例年通り、『丁寧かつ誠実』な仕事を心がけてください。

利用者からは、クレームや、明らかなルール違反があるかもしれません。
そのようなことを見聞きした場合には、ひとりで対応、判断せずに、周りの同僚や上司に報告、相談してください。

医学研究科という枠を超え、京都大学、日本、そして、世界をも視野に入れ、実務に励んで頂きたいと思います。京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設は、そういう視野をもって仕事をするのに値する施設と思っています。

本年もどうぞよろしくお願いします。