2019年5月9日木曜日

農大飼養学_007_グルコースは水に溶けやすいのに、でんぷんは水に溶けにくいのか?

溶けるという現象を以前、説明しました。
溶媒が水の場合、水は極性をもつので、極性をもつ分子を溶かすことができます。

では、グルコースは水によく溶けるのに、グルコースが連なったでんぷんはなぜ水に溶けにくいのでしょう?

グルコースは、分子中に-OH基を5個持っています。このーOH基が極性をもつので、水分子が引きつけられグルコース分子を取り囲み、グルコースを水に溶かします。

一方、デンプンはグルコースが連なったもので、グルコース1単位当たりーOH基を3つもちます。デンプン分子には、-OH基がたくさん含まれるので、水に溶けそうなものですが、水には溶けにくいですね。

その理由は、デンプンのーOH基はデンプン分子内の他のーOH基を引きつけるのに使われるからです。デンプンはせっかくの-OH基を水に取り囲んでもらうのに使うのではなく、自分自身の形を保つのに使います。結果的に、デンプンはらせん状の立体構造をとります。



2019年5月8日水曜日

農大飼養学_006_溶けるということ

あるものが「溶ける」ということは、どのような状態のことでしょうか?

その状態とは、溶けるもの(溶質)が分子1個ずつに分解してバラバラになり、溶かすもの(溶媒)の分子に取り囲まれている状態をいいます。

例えば、砂糖が水に溶けている状態とは、砂糖(=溶質)の分子が、水の分子(=溶媒)に取り囲まれた状態です。

では、水はどのような分子を取り囲みやすいでしょう?

水は極性を持っています。分子の中にプラスとマイナスの電荷をもちます。

そのため、水はプラスとマイナスの電荷をもつ物質を取り囲みやすいです。

つまり、水は極性をもつ分子をよく溶かします。

参考文献
バイオ研究者がもっと知っておきたい化学ー溶液の性質

2019年5月7日火曜日

農大飼養学_005_図書紹介『栄養学を拓いた巨人たち』

栄養学を拓いた巨人たち「病原菌なき難病」征服ドラマ
杉 治夫 著
2013年」4月20日 第1刷発行
講談社ブルーバックスY940

栄養学の進展が、歴史順にコンパクトにまとめられている。栄養学に出てくるキーワード(言葉)や概念がどのようにして作られたか、発見されたかを、栄養学に貢献した研究者のエピソードを通じて知ることができる。物語風に書かれているので、なじみやすい。栄養学の入門書として適している。(おススメ度:おススメ)

<著者の紹介と執筆の動機>
著者の杉治夫氏は帝京大学医学部名誉教授、専門は筋肉の生理学。
実父で生理学者の杉靖三郎が亡くなり、その蔵書の中に、ビタミンの発見の様子を描写した雑誌を発見した。その物語のドラマ性に惹かれ栄養学の進展に貢献した研究者を紹介するためにこの本を執筆した。

<内容>
この本で紹介されている研究者は、ラボアジェ(体内では食物がゆっくりと燃焼していることを示した)、ベルナール(代謝を解明)、マッカランなどビタミンの発見者たち、クレブス(クエン酸回路を発見)などである。

<コメント>
栄養は、生物が外界から物資を取り入れ、それを自身の体や機能にに役立つ物質に変化させることである。

栄養学の歴史を概観して、栄養の本体とは体の中で起こる化学であること、つまり、体の中で起こる物質の化学変化とエネルギー変換であることを理解しよう。

栄養素やビタミンの発見は、食物をすりつぶして脂溶性、水溶性のものに分け、さらにそれらを化学的な性質によって分けるという分析的な手法によりなされた。

栄養学は分析的な手法を用いて特定の物質を見つけ、その機能を明らかにするという、まさに「自然科学」の王道の学問として成立してきたことが分かる。