2013年12月21日土曜日

research oversight

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
最後の原則です。

1. While implementation of these Principles may vary from country to country according to cultural, economic, religious, and social factors, a system of animal use oversight that verifies commitment to the Principles should be implemented in each country.
(私訳)これらの「原則」の履行は文化的、経済的、宗教的、社会的要因に従って、国によって様々であろう。しかし、「原則に従うことを保証するための監視システムは個々の国々で履行されなければならない。
(解説)「原則」に従って動物実験が行われているかを監視するシステムが必要

2. This system should include a mechanism for authorization (such as licencing or registering of institutions, scientist, and/or projects) and oversight which may be assessed at the institutional, regional, and/or national level.
(私訳)このシステムは、機関、科学者、プロジェクトへの免許付与や登録などといった権限付与の機序を含まなければならない。そして機関レベル、地域レベル、あるいは国レベルで、監視しなければならない。
(解説)

3. The oversight framework should encompass both ethical review of animal use as well as considerations related to animal welfare and care.
(私訳)監視の枠組みは、動物の使用についての倫理的審査ならびに動物の福祉とケアに関する考慮を含まなければならない。
(解説)

4. It should promote a harm-benefit analysis for animal use, balancing the benefits derived from the research or educational activity with the potential for pain and/or distress experienced by the animal.
(私訳)それは、コストーベネフィット解析を推進しなければならないし、それにより、研究や教育活動から得られるベネフィットと動物が被る潜在的な痛みや苦痛とのバランスをとることができる。
(解説)

5. Accurate records should be maintained to document a system of sound program management, research oversight, and adequate veterinary medical care.
(私訳)プログラム管理、研究監視、そして、適切な獣医学的ケアを記載するために、正確な記録を残さなければならない
(解説)

動物実験、実験動物を使用する場合は、この「原則」を最上位において行うべきという考え方です。
そのため、実験動物を用いた研究は、「原則」に沿って行われるべきで、その妥当性を担保するために、監視システムの設置が求められます。
つまり、研究のためには、どんな動物実験を行ってもよい、というわけではありません。だから、research oversightという言葉が出てくるのだと思います。倫理的、法的に適正な動物実験を行っているかを監視するシステムです。日本では、各機関の動物実験委員会がこれに該当するのでしょう。

2013年12月20日金曜日

It is the responsibility of the institution

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
9つ目の原則です。

1. It is the responsibility of the institution to ensure that personnel responsible for the welfare, care, and use of animals are appropriately qualified and competent through training and experience for the procedures they perform.
(私訳)動物の福祉、ケア、使用について責任ある個々の研究者には、適切に資格が与えられ、訓練や経験を通して自身が行う手技を満たせるよう、研究機関は努めなければならない。
(解説)研究者個人ではなく、所属研究機関に責務がある


2. Adequate opportunities shoudl be provided for on-going training and education in the humane and responsible treatment of animals.
(私訳)動物の人道的で責任ある扱いに関する訓練と教育に関して、適切な機会が提供されなければならない。
(解説)

3. Institutions also are responsible for supervision of personnel to ensure proficiency and the use of appropriate procedures.
(私訳)機関はまた、個々の研究者が習熟できるよう指導すること、そして、適切な手技を用いることに対して責任を負う
(解説)

動物を適正に扱うことに関して、個々の研究者や現場の作業者に任せるのではなく、その所属機関の責任で、研究者や作業者に動物を適正に扱うよう指導、学習、訓練される必要性が述べられています。
機関全体で責任を負うということです。例えば、A大学のBさんが、不適切な動物実験を行った場合、その責任は、Bさんにあるのではなく、A大学全体にある、ということになります。Bさんが不適切な動物実験を行ったのは、Bさんを適切に指導できなかった管理者側(大学側)にあるということです。

2013年12月3日火曜日

バイオリソース勢ぞろい

神戸で開催されている第36回日本分子生物学会にて、ナショナルバイオリソースプロジェクトの展示がありました。
ナショナルバイオリソースプロジェクトは、文部科学省のプロジェクトで、生命科学研究に利用できる生物資源(バイオリソース)を体系的に整備しようとするものです。生物資源としては、動物、植物、細胞、遺伝子、情報などが含まれます。
このナショナルバイオリソースプロジェクトにおいて、私の所属機関は、2002年から実験用ラットを担当し、その収集・保存・提供を行っています。

今回、日本で最大規模の学術集会である分子生物学会の展示会場で、「バイオリソース勢ぞろい」と題した生物資源の展示がありました。そこで、私たちのプロジェクトの紹介をしてきました。

PCのディスプレイに映っているのが、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」のホームページ。左手前の置物は、ラット(左)とマウス(右)の模型です。
ラットの大きさを実感してもらうために、昨年、3Dプリンタで作製したものです。

ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」のホームページはこちら
 ↓
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/nbr/

2013年11月29日金曜日

動物実験のエンドポイント

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
8つ目の原則です。

1. Endopoints and timely interventions should be established for both humane and experimental reasons.
(私訳)人道的そして実験上の理由から、エンドポイントやタイムリーな介入というものが設定されなければならない。
(解説)エンドポイントとは、実験を終了する時点のことです。実験目標達成によるエンドポイントと人道的エンドポイントの2つがあります。実験計画の段階でこれらをあらかじめ設定する必要があります。

2. Humane endpoints and/or interventions should be established before animal use begins, should be assessed throughout the course of the study, and should be applied as early as possible to prevent, ameliorate, or minimize unnecessary and/or unintended pain and/or distress.
(私訳)人道的なエンドポイントやタイムリーな介入は、動物を使用する前に設定されなければならない。また、研究期間中ずっと評価されなければならない。さらに、不必要あるいは望まれない痛みや苦痛を防ぐ、軽減するあるいは最小限にするためにできるだけ速やかに適用されなければならない。
(解説)人道的エンドポイントについての文章です。

3. Animals that would be otherwise suffer severe or chronic pain, distress, or discomfort that cannot be relieved and is not part of the experimental design, should be removed from the study and/or euthanized using a procedure appropriate for the species and condition of the animal.
(私訳)さもなければ、取り除くことができず、実験計画には入っていない過酷なあるいは慢性的な痛み、苦痛や不快感を被るような動物は、研究から除外されなければならない。また、動物種に応じたそして個々の動物の状態に応じた手段でもって安楽死処分されなければならない。
(解説)

エンドポイントとは、実験を終了する時点のことです。
2つの観点から設定されます。
一つ目は、実験目標の観点から設定されるもので、「実験目標に対するエンドポイント」と呼ばれます。科学上の目的と到達目標の達成を優先した実験終了の時点のことです。
二つ目は、人道的観点から設定されるもので、「人道的エンドポイント」と呼ばれます。動物が受ける苦痛を未然に防ぎ、終結させ、もしくは取り除いた時点を指します。

一般的に、「人道的エンドポイント」は、動物種ごとにある程度決まった時点というのが想定されると思います。例えば、急激な体重減少や行動量の減少などから、動物の健康状態が推測できます。そして、それらのスコア化などを通して、「人道的エンドポイント」が設定できます。
侵襲性の低い実験であれば、「実験目標に対するエンドポイント」<「人道的エンドポイント」となり、動物にきわめて重度の苦痛をあたえることはないと思います。
侵襲性の高い実験の場合はどうでしょう。侵襲性の高い実験では動物に耐えがたい痛みを与えることがあります。この場合「実験目標に対するエンドポイント」>「人道的エンドポイント」となり、どちらを優先すべきかという問題に直面します。

動物実験は科学的な目的を達成するために行われるわけで、これが動物実験の定義でもあります。

そのため、動物実験を行うことは、必然的に実験目標に対するエンドポイント」を優先するということにつながるのではないでしょうか。結果として、「人道的エンドポイント」の設定が困難になります。例えば、『実験動物の管理と使用に関する指針(第8版)』の実験目標達成によるエンドポイントと人道的エンドポイントを説明する段落の最後の文は以下のとおりです(p29)。
「すべての実験において人道的なエンドポイントを適用すべきであるが、腫瘍モデル、感染症、ワクチンの効果試験、疼痛モデル、外傷、モノクローナル抗体の作製、毒性試験、臓器あるいは器官系の不全、循環器系ショックのモデルなどに関わる動物実験は、特別な検討が一般的に必要とされる。」
多くの動物実験は、ここに挙げられたような種類のものです。そのため、「人道的エンドポイント」を適用することは、耐え難い痛みや苦痛をどの程度のものとするか、その線引きによると思われます。そして、その線引きは、かなり難しいものとなるでしょう。

このような実験では、少なくとも、瀕死の状態を定義し、その状態に陥った動物は、速やかに安楽死処分することが、必要ではないでしょうか。そのためには、日々の動物の状態の観察が非常に重要と思います。



2013年11月28日木曜日

would cause or cause

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
7つ目の原則です。

1. Investigators should assume that procedures that would cause pain or distress in human beings cause pain or distress in animals, unless there is evidence to the contrary. 
(私訳)ヒトに対して痛みや苦痛をもたらすだろう手法は、動物に痛みや苦痛をもたらす、と想定しなければならない。
(解説)助動詞wouldに注目。ヒトで苦痛をもたらすだろう(would cause)手法。対して、動物に苦痛をもたらす(cause)手法。この違いは何か?動物に実際なされている手法は、ヒトでは現実にはなされていない。各種摘出手術、遺伝子改変、薬物投与実験など。

2. Thus, there is a moral imperative to prevent or minimize stress, distress, discomfort, and pain in animals, consistent with sound scientific or veterinary medical practice. 
(私訳)そのため、ストレス、苦痛、不快感、痛みを避けるあるいは最小限にするための道徳的要請が存在し、これは、科学的あるいは獣医学的実践と矛盾しないものである。
(解説)

3. Taking into account the research and educational goals, more than momentary or minimal pain and/or distress in animals should be managed and mitigated by refinement of experimental techniques and/or appropriate sedation, analgesia, anesthesia, non-pharmacological interventions, and/or other palliative measures developed in consultation with a qualified veterinarian or scientist.
(私訳)研究そして教育上の目標を考慮すると、動物の一時的ないしは最小限の痛みや苦痛でさえも、実験手技の洗練、適切な鎮静、鎮痛、麻酔、非薬理学的介入、そして、資格を持った獣医師や科学者の助言によって作成された緩和策などによって、管理・緩和されなければならない。
(解説)

4. Surgical or other painful procedures should not be performed on unanesthetized animals.
(私訳)無麻酔下の動物に対して、外科的処置あるいは痛みをともなう処置は行ってはならない。
(解説)

ここでは、ヒトと動物の共通性が存在することが前提になっています。
つまり、「苦痛や痛みといった基本的な感情・感覚は、ヒトと動物で共通している」、という考え方です。

ヒトと動物が共通の生物的な基盤ともつことは、様々な面で指摘されています。
たとえば、遺伝やゲノムの研究から、ヒトと動物は多くの遺伝子を共有しており、それぞれがよく似ていることがわかっています。神経学では、ヒトと動物が共通の神経機能をもつことが指摘されています。さらに、行動学ではヒトと動物の基本的な行動や表情が似ていることが示されています。
これらの知見は、様々な分野で蓄積されたものですが、もとはといえば、ヒトと動物は共通の祖先から長い年月をかけて分岐していったという「進化論」に緒を発します。

さて、本題に戻りますが、ヒトから見て(想像して)、その行動や表情から、苦痛や痛みを示していると思われる動物がいるならば、その苦痛や痛みを取り除くべきであるということがこの項では述べられています。
苦痛や痛みを取り除く方法として、取り扱い者の観点(実験手技)、薬物の観点(麻酔など)が挙げられています。

冒頭の「苦痛や痛みといった基本的な感情・感覚は、ヒトと動物で共通している」という考え方は、動物実験に反対するする方々の理論的柱でもあります。動物実験を行う立場と、それに反対する立場が、共通した認識をもっているのです。
では、なぜ、対立が起こるのでしょうか?
以下、私見ですが、動物実験に反対する立場は、「そもそも健康な動物に、苦痛や痛みを与えてよいのか?」という考えなのではないでしょうか。
動物実験を行う立場は、「人の福祉を考えたならば、健康な動物に、苦痛や痛みを与えてることもいたしかたない。しかし、その苦痛や痛みは最小限であるべきだ。」という考えかたではないでしょうか。

2013年11月16日土曜日

動物実験における獣医学的ケア

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
6つ目の原則です。

1. The welfare, care, and use of animals should be under the supervision of a veterinarian or scientist trained and experienced in the health, welfare, proper handling, and use of the species being maintained or studied.
(私訳)動物の福祉、ケア、使用については、該当動物種の健康、福祉、適切な取り扱い、ならびに使用に関して訓練を受けかつ経験のある獣医師あるいは科学者の監督のもとで行わなければならない。
(解説)知識と経験を有する専門家のもとで、動物の使用や管理を行うこと

2. The individual or team responsible for animal welfare, care and use should be involved in the development and maintenance of all aspects of the program.
(私訳)動物の福祉、ケア、使用に責任をもつ個人あるいはチームは、活動計画の作成と運用に関与しなければならない。
(解説)「program」は、動物の管理と使用の適正化にかかる研究所の活動計画を意味します。これは階層的に構成され、親プログラムの下に、各論としての子プログラムが収まります。


3. Animal health and welfare should be continuously monitored and assessed with measures to ensure that indicators of potential suffering are promptly detected and managed.
(私訳)潜在的な苦痛を示す個体が迅速に発見、管理できるような様々な方法を用いて、常に、動物の健康と福祉を監視、評価しなければならない。
(解説)


4. Appropriate veterinary care should always be available and provided as necessary by a veterinarian.
(私訳)適切な獣医学的ケアがいつでも利用可能で、必要に応じて獣医師により提供されなければならない。
(解説)獣医学的ケアの重要性


2013年11月15日金曜日

The health and welfare of animals should be primary considerations

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
5つ目の原則です。

1. The health and welfare of animals should be primary considerations in decisions regarding the program of veterinary medical care to include animal acquisition and/or production, transportation, husbandry and management, housing, restraint, and final disposition of animals, whether euthanasia, rehoming, or release.
(私訳)動物の入手や繁殖、移動、管理、住環境、拘束、さらに、最終処分(安楽死、引き渡し、解放であれ)に関する獣医学的ケアについての手順を決めるにあたって、第一に考慮すべきことは、動物の健康と福祉である。
(解説)動物の健康と福祉が最優先

2. Measures should be taken to ensure that the animals' environment and management are appropriate for the species and contribute to the animals' well-being.
(私訳)動物たちの周りの環境と、動物の管理方法が、種の特性にあったものとなるよう、そして動物のウェルビーイングに貢献するよう、さまざまな手段をとるべきである。
(解説)動物種に応じた管理方法というものがある

2013年11月14日木曜日

動物種の選定

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
4つ目の原則です。

1. Animals selected for the activity should be suitable for the purpose and of an appropriate species and genetic background to ensure scientific validity and reproducibility.
(私訳)動物は、実験の目的に合致したものを選定しなければならない。また、科学的な妥当性と再現性をみたすために適切な動物種や遺伝的背景をもったものを選定しなければならない。
(解説)実験の目的に応じた動物種を選定することが重要


2. The nutritional, microbiological, and general health status as well as the physiological and behavioral characteristics of the animals should be appropriate to the planned use as determined by scientific and veterinary medical experts and/or the scientific literature.
(私訳)動物の栄養学的、微生物学的、そして一般的な健康状態に加え、生理学的、行動学的特性が、科学や獣医学専門家、あるいは科学的文献によって立案された実験計画に適合したものでなければならない。
(解説)動物種の選定にあたっては、栄養状態、病気に罹っていないかだけではなく、健康な状態での生理や行動を考慮にいれること。

動物実験の種類はさまざまです。その目的もさまざまです。
効果的に目的を達成できるよう、動物種を選定することが重要です。

また、同じ動物種でも、遺伝的な違いがあれば、実験に対する反応性も変わってきます。
例えば、マウスの系統のひとつであるC3H系統は、なにもしなくても長期間飼育していれば乳がんを発症します。このような動物を用いて、ある新規化合物が乳がん発がん性をもつか否かを検討しようとしても、明確な結論はえられないでしょう。なぜなら、その新規化合物を投与していない群(対照群)においても乳がんが発生するためです。

これを回避するには、乳がんを自然発症しない系統を用いることが必要です。
このように動物実験を計画するには、動物種のみならず、同じ動物種でもどの系統、どのような遺伝的バックグランドをもつのか、を考慮する必要があります。

2013年11月12日火曜日

Xativa:木屋町二条のバル

出張帰りに寄りました。
Xativaシャティバと呼ぶそうです。

1階はカウンター6席、6席テーブルと2席のテーブル。
2階もあるようです。
マスターひとりでで料理を作ります。
他にバイトが1名

月曜日の午後8時ごろでしたが、お客さんが結構いました。

人参とドライイチジクのサラダ
田舎パテ
イカの墨煮
を頼みました。

いずれもおいしかったです。

マスターは料理だけでなくサービスもなかなかとみました。
また、行きたいです。




2013年11月7日木曜日

実験動物の飼育設備:ペン

実験動物としてのイヌ、ネコ、あるいは、ブタがいます。
これらの動物を飼育する場合、おおくの動物実験施設では、自動の給水・給餌機が備わったケージが使われています。

このようなケージは通常ステンレス製で、清掃を容易にするために、床がすのこになっています。
なぜ床がすのこになっているかというと、糞尿をすのこの隙間から下に落ちるようにするためです。

しかし、すのこの床は動物の福祉を考えると、望ましいものではありません。
そこで、考えられたのが、ペンという飼育設備です。
ペンとはいわゆる囲いで、イメージとしては平らな床に囲いを設けたものです。

例えば、数メートル四方の区画を設けて、四方に囲いを取り付けます。
四方の囲いは、動物たちが立ち上がることができるよう十分な高さをとってあげます。
イヌ、ネコ、ブタなどは、家畜ですので、群れで飼育することが可能ですし、その方が動物にとってもよいとされています。ペンでは群飼も可能です。

このようなことから、『実験動物の管理と使用に関する指針(第8版)』では、イヌ、ネコ、ブタの飼育設備として、ペンが推奨されています。

ただ、ペンでは、糞尿が床に残ります。
そこで、一段高い場所を設けてやります。
動物たちは、すぐに慣れて、一段高い場所で寝て、糞尿は一段低いところでします。


2013年11月2日土曜日

法然院

法然院に行ってきました。

紅葉はまだのようです。
でも、とても過ごしやすい天気でした。


2013年10月31日木曜日

日曜はじまり

今年もあと2ヶ月になりました。

来年の手帳を買いまいした。
私は、ほぼ日手帳をつかっています。
ほぼ日手帳は、日曜はじまりと、月曜はじまりがありますが、私は、日曜はじまり派です。
ほとんどのカレンダーが日曜はじまりなので、眼がなれてますから。

ほぼ日手帳の気に入っている点は、

1.毎年、ほぼ変わらないデザイン

2.ほぼ180°ひらく綴じ方

3.ほぼ片手に収まる大きさ

日曜はじまりはネットでしか買えません。
でも、付録があります。
ボールペンが毎年付いてきますが、このペンの書き味がまた素晴らしい。
三菱鉛筆株式会社のUNIジェットストリームというものです。
今年は黒色、替芯も1本ついてきました。



2013年10月29日火曜日

ツバメノート

実験の記録は大事です。
私たちの研究室では、ツバメノート株式会社の特A4版(A5001)というものを使っています。
通常のA4より少し、縦が長いです。

実験ノートをつける基本コンセプトは、
ノートが”独り歩き”してもわかるように。

最低限の決まりごとは、

1. 個々の実験をページ単位でつける
  ページの途中から、新しい実験の記録を記さない。

2.全てのページの1行目に実験日の日付を記入  

3.実験ごとに簡単なタイトル(目的)を記入

4.実験の材料と方法を記入

5.実験の結果を記入、あるいは、結果の写真を貼る

6.ペンで記入(鉛筆は使用不可)

7.関連資料はノートにペタペタ貼っていく

ページ単位でコピーすれば、即、報告資料となる。
それを目指しています。

ちなみに、ツバメノートの紙は、中性紙フルースというもので、「一万年以上永久保存が利く」、とのことです。


2013年10月25日金曜日

the Three Rs

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
3つ目の原則です。

1. Animals should be used only when necessary and only when their use is scientifically and ethically justified.
(私訳)動物は、必要性があるとき、その利用が科学的および倫理的に妥当なときにのみ、使用されなければならない。
(解説)むやみに使用はできない。

2. The principles of the Three Rs - Replacement, Reduction and Refinement - should be incorporated into the design and conduct of scientific and/or educational activities that involve animals.
(私訳)Three RsすなわちReplacement、Reduction、Refinementの原則は、動物を用いた科学や教育活動の立案と実施に取り入れなければならない。
(解説)動物実験のThree Rsの原則は、ラッセルとバーチにより提唱された。動物実験を行うにあたり、できるだけ他の方法で置換 (Replacement) する。できるだけ使用動物数を減らす (Reduction)。洗練された手技で、動物に苦痛を与えない方法で動物実験を行う (Refinement) とされている。ようするに、できるだけ動物実験はしない。したとしても使用数は少なく。そして、動物にやさしく、ということです。

3. Scientifically sound results and avoidance of unnecessary duplication of animal-based activities are achieved through study and understanding of the scientific literature and proper experimental design.
(私訳)科学的に正当な結果を得たり、動物実験の不必要な重複を避けることは、科学文献の調査や理解、そして適切な実験計画によってもたらされる。
(解説)Three RsのReductionをどのように達成するかを述べています。これまでなされている実験を重複して行わないよう、実験計画の重要性が述べられている。


4. When no alternative methods, such as mathematical models, computer simulation, in vitro biological systems, or other non-animal (adjunct) approaches, are available to replace the used of live animals, the minimum number of animals should be used to achieve the scientific or educational goals.
(私訳)生きた動物の代替として、数学モデル、コンピューターシュミレーション、in vitroの系、動物を用いない手法などの他の手段が利用できない場合、科学あるいは教育の目標を達成するために用いる動物の数は最小限の数としなければならない。
(解説)ReplacementとReductionの原則


5. Cost and convenience must not take precedence over these principles.
(私訳)費用と便宜性がこれらの原則に優先することがあってはならない。
(解説)経費が高くついたり、不便なことがあっても、この原則を優先すること


どのような実験もそうですが、先行研究を精査し、適切な実験計画を立案することが重要です。

2013年10月24日木曜日

名前をみれば歴史がわかる:系統名

亜系統名の区別は、オリジナルの系統名の後ろに、「ラボコード」をつけることで区別すると、以前述べました。
http://takashikuramoto.blogspot.jp/2013/10/substrain.html

しかし、動物業者のカタログなどをみていると、複数のラボコードがついている場合がよくあります。
例えば、C57BL/6JJcl, C57BL/6JJmsSlc, C57BL/6NCrlCrlj などです。

これらの系統は、オリジナルの系統名が、C57BL/6 で、そのあとにラボコードが複数ついています。

ここで使われているラボコードとそのラボコードが示す研究所の名前は、以下の通りです。

  • J; ジャクソン研究所
  • Jcl; 日本クレア
  • Jms; 東京大学医科学研究所
  • N; 米国NIH
  • Crl; チャールスリバー
  • Crlj; 日本チャールスリバー
  • Slc; 日本エスエルシー

系統が分与されると、分与先で20世代経たのちに、分与先のラボコードを追加します。
これは世界的なとりきめです。

つまり、C57BL/6JJcl とは、オリジナルのC57BL/6 がジャクソン研究所(ラボコード:J)を経由して、日本クレア(ラボコード:Jcl)に分与され、現在まで維持されいている系統、ということになります。

ラボコードの検索は、以下のサイトで可能です。
自分の使っている系統がどのような歴史をもっているか調べてみてはいかがでしょう?







2013年10月21日月曜日

SPF動物とは

実験動物、とくにマウスやラッでは、SPFという言葉がよく出てきます。
このマウスはSPFですか?このラットはSPFですか?というぐあいです。

SPFとはいったいなんでしょう?
これは、Specific Pathogen Freeの略で、直訳すれば、「特定の病原体がいない」となります。
「特定の病原体」というのがイメージしにくいかと思います。
私は、「特定の病原体」というよりも、「指定された病原体」と意訳した方がイメージしやすいのではと思っています。
つまり、「このリストに載っている○○、××、△△といった病原体をもっていない」ということです。

では、これらの病原体は、誰が指定するのでしょう?
病原体のリストは誰が指定するのでしょう?

このリストは、SPF動物を飼育する施設が指定します。
例えば、A施設ではAという病原体のリストを作成し、「我々の施設では、このリストに載っている病原体を持っていない動物をのみを飼育します」とあらかじめ宣言しておくのです。

この考え方は、ヒトや家畜の感染症の予防法の考え方に立脚したものです。
身近な例では、インフルエンザにかかると学校を休まなければなりませんね。
インフルエンザは「学校において予防すべき伝染病」としてあらかじめ法律によって指定されています。
つまり、「日本の学校では、インフルエンザをSpecific Pathogenとして指定しており、それをもたない(Freeな)学童のみを学校に来させる」とあらかじめ決めています。

このような考え方では、人間もSPFです。

2013年10月20日日曜日

to ensure that the highest standards of scientific integrity prevail

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
2つ目の原則です。

1. The use of animals for scientific and/or educational purposes is a privilege that carries with it moral obligations and responsibilities for institutions and individuals to ensure the welfare of these animals to the greatest extent possible.
(私訳)科学や教育目的で動物を使用することは、特権であり、この特権には研究所や実験者が動物の福祉を可能な限り最大限確保する道徳的義務と責任が付随する。
(解説) 動物実験は、無制限の特権ではない、そこには義務と責任がついてくる。

2. This is best achieved in an institution with a culture of care and conscience in which individuals working with animals willingly, deliberately, and consistently act in an ethical, humane and compliant way. 
(私訳)このことが最も達成されるのは、ケアと道義心の文化をもつ研究所においてである。そのようなところでは、個々の実験動物従事者は、倫理的、人道的、法律に従った方法で、積極的に、ていねいに、首尾一貫して行動している。
(解説)動物福祉を保証する義務や責任をはたすには、機関・研究所単位での実践が必要。

3. Institutions and individuals using animals have an obligation to demonstrate respect for animals  to be responsible and accountable for their decisions and actions pertaining to animal welfare, care and use, and to ensure that the highest standards of  scientific integrity prevail.
(私訳)動物を用いる研究所や研究者には、動物に対する尊敬の念をあらわす義務がある。そして、動物の福祉、ケア、利用に関する自分たちの決定や行動に責任をもち、説明しなければならない、また、最高水準の科学の健全性が普及するよう務めねばならない。
(解説)まず、動物に対する敬意、犠牲になってくれていることに対する敬意、を表すこと。このような敬意をもって、説明責任と科学的健全性(他の誰にも影響されない中立的な)の普及に努める。


最後の分のscientific integrityという言葉は、初めてみる言葉です。
日本語では、「科学の健全性」と呼ばれているようです。
http://satoyasushi.blogspot.jp/2010/12/scientific-integrity.html


科学技術に関する情報が、たとえば政治的な圧力などによって、不当に曲げられないように、というような意味合いでしょうか。

2013年10月18日金曜日

コスト&ベネフィット

医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guiding Principles For Biomedical Research Involving Animals) は、10の原則からなります。
ひとつずつ見ていきましょう。

The following principles should be used by the international scientific community to guide the responsible use of vertebrate animals in scientific and/or educational activities.
(私訳)国際科学コミュニティは、科学活動や教育活動における脊椎動物の責任ある利用を案内するために、以下の指針を利用しなければならない。
(解説)should は、「~べき」ではなく、より強く、「ねばならない」としました。この原則はあくまで脊椎動物が対象です。

原則1
1. The advancement of scientific knowledge is important for improvement of human and animal health and welfare, conservation of the environment, and the good of society.
(私訳)科学的知識の進展は、ヒトや動物の健康と福祉、環境の保全、社会の幸福の向上に重要である。
(解説)ヒトや動物、環境、社会が対象になっています。

2. Animals play a vital role in these scientific activities and good animal welfare is integral to achieving scientific and educational goals.
(私訳)動物はこれら科学的活動において中心的な役割を果たしている。また、優れた動物福祉は科学的および教育上の目的達成のためになくてはならないものである。
(解説)動物福祉の重要性

3. Decisions regarding the welfare, care, and use of animals should be guided by scientific knowledge and professional judgement, reflect ethical and societal values, and consider the potential benefits and the impact on the well-being of the animals involved.
(私訳)動物の福祉、ケア、利用に関する決定は、科学的な知識と専門的な判断によってなされなければならない。また、倫理的、社会的価値にを反映しなければならない。さらに、潜在的な利益と動物の健康・福祉への影響を考慮しなければならない。
(解説)一文を3つの文に分けています。最後の部分ですが、動物実験についての「コスト&ベネフィット」の考え方が反映されていると思われます。動物実験の「潜在的(ヒトへの)利益」と「動物の健康への影響」これをてんびんにかけて「潜在的利益」が優位であれば、動物実験は正当化されるという考え方です。

2013年10月17日木曜日

a privilege entrusted by society

国際医科学機構評議会 (Council for International Organizations of Medical Sciences, CIOMS) の医学生物学領域に関する国際原則 (The international Guding Principles For Biomedical Research Involving Animals) が2012年12月に改訂されました。
今回は、1985年に公表されたものを、CIOMSとICLAS (International Council For Laboratory Animals Science) が協働で改訂しました。
原文は英語版のみです。
日本語訳が、日本実験動物協会の情報誌LABIOに出ています。
これは、東北大学の笠井先生が中心となって翻訳されたものです。

前文の最終段落です。英語の原文のあとに、笠井訳を参考に、私訳と解説をのせます。
1. The use of animals in research, education and testing is an essential component of the advancement of our understanding about human and animal function.
(私訳)研究、教育、試験に動物を用いることは、ヒトや動物の機能に関する我々の理解を進展させるための必須の構成要素である。
(解説)動物実験は、我々の理解を進展させるための、ひとつの構成要素にすぎないが、必須のもの。ヒトのためだけにあるのではない、動物のためでもある。

2. This knowledge is important for advancing human and animal health and welfare throught disease prevention and cures, new treatments, and drug and device development.
(私訳)この知識は、疾患の予防と治療、新しい治療法、薬や機器の開発を通して、ヒトと動物の健康と福祉を進展するために重要である。
(解説)医学生物学領域に関する国際原則なので、疾患の治療や予防を、中心に考えている。

3. The scientific community, understanding that using animals is a privilege entrusted by society, remains committed to ensureing the health and welfare of animlas as an integral consideration when animals are used for these purposes.
(私訳)科学コミュニティは、動物を用いることが社会から委ねられた特権であることを理解し、動物が上記の目的のために用いられる際に欠くことのできない配慮として、動物の健康と福祉を確保するよう全力を傾けるなければならない。
(解説)動物実験を行うことは、社会から特別に許された権利。それゆえ、義務が発生する。その義務とは、動物の健康と福祉に確保するよう全力を傾けること。

私が注目したのは、"using animals is a privilege entrusted by society" の部分です。
こういう考え方があるために、動物実験を行うためのライセンス制や、社会への説明責任という考え方が出てくるのだと感じました。

2013年10月14日月曜日

エアシャベル

天気が良かったので京都府立植物園に行きました。
芝生広場は家族連れが多く、子供たちが駆け回っていました。
植物園は桜の名所でもあり、春は多くの花見客でにぎわいます。
しかし、桜の木の多くは、昭和30年代に植えられたもので、そろそろ寿命とのことです。
また、花見客が多いためか、桜の根元は踏み固められ、桜にとってよくない状況です。
桜の寿命を延ばすため、樹勢を回復させるために、植物園では、桜の木の周りの土を掘り返すことにしました。
しかし、普通のスコップやショベルカーで掘り返すと根を痛めます。
そこで、登場したのが「エアシャベル」
圧縮空気で土を掘り返すというものです。
桜の木の根元東西南北4か所に、1m×2mの穴をこのエアシャベルで掘り返し、そこに通水性、通気性のよい土を入れました。
大温室の北側の一角に植わっている桜に、この処置を施したとのことです。
さて、その効果はいかに?
来年の春が楽しみです。

2013年10月13日日曜日

吉田地区のお祭り、神幸祭

吉田地区の氏神様、今宮社のお祭り、神幸祭が行われました。
今宮社は、吉田神社本殿の麓にあります。
吉田地区の氏神様とのことで、吉田神社よりも古くからこの地にあるそうです。
毎年、この時期に、御神輿が町内を練り歩きます。
京都大学の本部も吉田地区にあるので、御神輿がやってきます。

2013年10月11日金曜日

亜系統 (substrain)

兄妹交配を20回以上続けると、近交系として扱うことができると、先に述べました。
しかし、この時点で、ゲノム全体の約2%はまだ固定していません。
マウスやラットの近交系は、系統として確立できた後に、他の研究者へ研究材料として分与されることがよくあります。

わずかな領域でもゲノムがまだ固定していない近交系が、分岐した場合どんなことがおこるでしょう?
つまり、ある近交系が、もともと確立された場所で維持される場合と、分与先で維持される場合が、どんなことがおこるでしょう?
ゲノムの固定されていない領域が、2つの場所で、それぞれ別個に固定されることが予想されますし、実際そうなります。
そうなると、同じ近交系Aでも、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aは、ゲノムレベルで異なることになります。

当然、ゲノムが異なれば、表現型も異なることが予想されます。
そこで、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aを区別する必要がでてきます。
区別をするには?
そう、名前を変えればいいのです。ただ、両者は、もともとは同じ系統であったわけですから、それがわかるような系統名しておく方がよいでしょう。

そこで、考え出されたのが、(オリジナルの系統名)+(/スラッシュ)+(ラボコード)という表記法です。
ラボコードとは、研究所固有の標識みたいなもので、アルファベットの組合せからなります。
例えば、京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設であれば、[Kyo]です。
ラボコードは、重複がないように、国際的に管理されています。

さて、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aは、どのように表記されるでしょう?
X研究所のラボコードをXj、Y研究所のラボコードをYj、としましょう。
そうすると、X研究所の近交系Aは、A/Xj とあらわすことができ、Y研究所の方は、A/Yj となります。
A/Xj と A/Yj、区別できましたね。

「中身が違えば、名前も変える」
あれっ、どっかで聞いたことがあるような。。。

A/Xj と A/Yj、いずれも近交系です。
そして、同じ系統から由来する系統同士を、亜系統と呼んでいます。

2013年10月10日木曜日

save as

実験データの記録や論文作成などで、ファイルをやり取りすることがあります。
受け取った側は、受け取ったファイルにデータを追加したり、ファイルを改訂したりします。
当然、改訂したファイルは、受け取ったファイルとは異なります。
だから、ファイルを保存するとき、上書き保存[save]ではなく、別名で保存[save as]しています。
改訂したファイルをもとの送り手に送り返した場合、もとの送り手の手元には、オリジナルのファイルと改訂されたファイルが、別のものとして残るからです。
上書き保存した場合は、内容は異なっていても、同じ名前のファイルがとどくことになります。
どちらが、オリジナルなのか、改訂版なのか、わかりません。
「内容が違えば、名前も変える」この基本コンセプトでファイル管理しています。

ちなみに、どのようにファイル名を変えるかですが、私は次のようにしています。
(オリジナルのファイル名)+_(アンダーバー)+(日付6ケタ)+(イニシャル)
これだと、改訂した日付と誰が改訂したか一目でわかると思います。

2013年10月8日火曜日

なぜ、兄妹交配は20回必要か?

動物実験に用いるマウスやラットでは、それらの遺伝的な均一性を保つために、近交系 (inbred strain) というものを作製します。
近交系の作製には、生まれてきた同腹の雄と雌をかけ合わせて、その産子を得る。
そして、その産子の中の雄と雌をかけ合わせて、さらに、産子を得る、ということを繰り返します。
このような同腹の雄と雌を交配することを、兄妹交配といいます。
兄妹交配を20回以上繰り返すと、近交系として確立できた、といえます。

兄妹交配を繰り返していくと、任意の遺伝子座がある対立遺伝子のホモ接合(例えば、a/a, A/A)となります。
そして、同じタイプの対立遺伝子のホモ接合同士が、掛け合わさるようになります。
このようなタイプの掛け合わせをを「インクロス」といいます。

インクロスから得られる遺伝子型は、ひとつしかありません。
例えば、a/a X a/a から得られる遺伝子型は、a/aのみ。
つまり、一度、a/a X a/a のようなタイプのかけ合わせがおこると、その遺伝子座は、次世代以降つねに、a/a X a/a の掛け合わせとなり、得られる遺伝子型は、a/a のみとなります。
このような状態を、遺伝子座が固定したといいます。

兄妹交配を20回以上続けると、全遺伝子座の98.0%でインクロスがおこると理論的にいわれています。
この数値をもとに、兄妹交配を20回以上=近交系、としているのです。

でも、残り2%の遺伝子座では、まだ、遺伝子座は固定していません。
そこで、さらに、兄妹交配を続けます。
兄妹交配40回でインクロスの確率は99.97%、60回で99.99%と計算されます。

近交系の理論を、以前、LABIO21という日本実験動物協会の情報誌で発表しました。
許可を得て、以下のHPで掲載しています。
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/Kuramoto/contents/ExpAnimGenet.htm

2013年10月7日月曜日

荒神橋より

鴨川って、とてもいい川だと思います。
都市部を流れている。
流れが穏やかで、そこそこきれい。
河川敷が整備されている。
周囲に高い建物がなく、ひろびろしており、遠くまで見通せる。
いろいろ、理由がありますが、なんといっても、一番の理由は、「川のなかに入ることができる」と思います。

都市部の川で、川のど真ん中まで入ることができる川はそうそうないのでは?

2013年10月5日土曜日

動物実験とは、

動物実験とは、動物を用いた実験です。
『広辞苑第四版』によりますと、実験(experiment)とは、理論や仮説が正しいかどうかを人為的に一定の条件を設定してためし、確かめてみること、です。
つまり、動物実験とは、動物を用いて、理論や仮説が正しいかどうかを人為的に一定の条件を設定してためし、確かめてみることです。

実験には再現性が求められ、当然のことながら、動物実験にも再現性が求められます。

さて、動物実験の再現性に影響を及ぼすものは何でしょう?
主要なものを4つあげます。
それは、1)試薬や器具など、2)飼育環境、3)動物、4)実験技術、です。

動物実験の再現性を確保するために、これら全てに再現性が求められます。
  1. 試薬や器具は、いつでも一定の品質をもったものを用意できます。
  2. 飼育環境は、温度や湿度などです。現在では、動物実験を行うための専用の施設が準備されています。
    そこでは、高度な空調設備を使って、1年を通して、一定の環境が保たれています。
  3. さて、動物はどうでしょう?
    動物がいつでも一定の品質を保つには、その品質に影響を及ぼす要因を考える必要があります。
    その要因とは、遺伝と環境です。先ほど述べたよう、環境は一定に保たれている訳ですから、遺伝要因を一定保つ必要があります。
    この遺伝要因を一定に保つために考え出されたのが、近交系(古くは、純系ともよばれていた)という概念です。
    近交系については、後日、説明します。
    近交系というものをつかい、遺伝的にばらつきのない、均一な動物をつくることで、動物の品質を一定に保っています。
  4. 最後に、動物実験技術です。
    これは、人間が行うことです。マスターするには、練習する必要があります。
    有能な技術者であれば、動物に対し、つねに一定の処置を施すことができます。

このように、動物実験は様々な要因を一定に保つことで、その再現性を確保しています。


2013年10月4日金曜日

いつもお世話になっております

メールは我々の日常生活に欠かせないものとなっています。

メールを仕事で使う場合、私が最も心がけていることはといえば、
  1. 書式は、テキスト形式で
  2. 署名(氏名、所属、電話番号、メールアドレス)を必ずつける
  3. 挨拶文と結びのことばを入れる

以上の3点でしょうか。
書式については、メールの容量を少なくするために、HTML形式ではなく、テキスト形式にしています。

署名は、全てのメールに自動的に付けるよう設定しています。
これは、私への連絡をスムーズにするためです。
ある人に、電話をしたい、郵便物を送りたい、となった場合、その人からのメールを見る場合が多いと思います。
その時に、氏名のみで、住所や電話番号がなければ、住所録を検索するか、下手をすると、名刺を探す羽目になります。
このような手間を、相手にさせないために、全てのメールに署名を付けています。
それと、以前は英語の署名としていましたが、現在は、日本人にメールを出すときは日本語の署名にしています。

最後の、あいさつ文と結びのことばは、相当親しい方に出す以外は、必ず入れるようにしています。
あいさつ文は、「いつもお世話になっております。」
久しぶりに出す相手には、「お世話になっております。」
そして、結びの言葉は、「お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。」
または、「今後とも、よろしくお願いします。」

他にも色々ありますが、この3点はいつも気をつけています。

2013年10月3日木曜日

動物実験に関する技術を習得する理由

学生さんに基礎的な動物実験技術を体験してもらっています。
実習に先立ち、動物実験技術を習得する必要性を説明します。
はたして、これでみんな納得するでしょうか?

  1. これから、みなさんは動物実験をします
  2. 動物実験は医学の発展に不可欠です
  3. 動物実験を行うには、技術を習得する必要があります
  4. みなさんは、今後、医学に係っていきますね
  5. だから、みなさんは、動物実験技術を習得する(少なくとも知識を得る)必要があります
  6. この実習では、動物実験技術のうち、もっとも基本的な技術を学びます

自分で説明していてなんですが、私が生徒であれば、つっこみどころ満載です。
まず、2.の文章ですが、本当にそうでしょうか?
別に、動物実験をしなくても医学の発展はあるでしょう。
簡単に反論されますね。

3.の文章は、まあよし。4.もOK。

5.は、2~4.から導出されているのですが、正しいでしょうか?
先に書いたように、2.が否定されれば、前提がくずれるのでアウト。

2.が正しいとした場合は、どうでしょう?
医学に係るから、医学の発展に不可欠な動物実験を進めるための動物実験技術を習得する必要がある。
医学への係り方も、動物実験だけではなく、臨床や保健行政など色々あるわけで、動物実験技術を学ぶ必然性はないと思います。
と、学生に言われたら、そうだよな、って言うしかありませんね。

社会に対しても、動物実験の必要性を説明する際には、このあたりを論理的に説明できるようにしておく必要があると思っています。

2013年10月2日水曜日

リーダの辞意は慰留すべきか?

京都大学に赴任して、11年と半年。きりがいいので始めてみた。

リーダーとは、組織の進退を最終決定する存在だ。
また、優秀なリーダーとは、決断を下すにあたり、組織内の様々な人の意見を聞き、状況を勘案し、判断するはずだ。
さて、リーダーが辞意を申し出たとき、それを遺留すべきかどうか?
私は慰留すべきでないと思う。
なぜなら、リーダーの辞意は、単なるリーダー個人の気持ちではなく、その組織のリーダーとしての最終決定であるからだ。
その決定は、最大限尊重されるべきである。
リーダーの辞意(決定)の否定は、リーダーの決断力・判断力への否定、リーダーの否定、組織の否定、さらには、組織のメンバー(自分自身)の否定に他ならない。

もし、リーダ―に辞意に対して、慰留を唱える人がいれば、その人はリーダーを尊重しているようで、実は、否定している、と言わざるをえない。