兄妹交配を20回以上続けると、近交系として扱うことができると、先に述べました。
しかし、この時点で、ゲノム全体の約2%はまだ固定していません。
マウスやラットの近交系は、系統として確立できた後に、他の研究者へ研究材料として分与されることがよくあります。
わずかな領域でもゲノムがまだ固定していない近交系が、分岐した場合どんなことがおこるでしょう?
つまり、ある近交系が、もともと確立された場所で維持される場合と、分与先で維持される場合が、どんなことがおこるでしょう?
ゲノムの固定されていない領域が、2つの場所で、それぞれ別個に固定されることが予想されますし、実際そうなります。
そうなると、同じ近交系Aでも、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aは、ゲノムレベルで異なることになります。
当然、ゲノムが異なれば、表現型も異なることが予想されます。
そこで、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aを区別する必要がでてきます。
区別をするには?
そう、名前を変えればいいのです。ただ、両者は、もともとは同じ系統であったわけですから、それがわかるような系統名しておく方がよいでしょう。
そこで、考え出されたのが、(オリジナルの系統名)+(/スラッシュ)+(ラボコード)という表記法です。
ラボコードとは、研究所固有の標識みたいなもので、アルファベットの組合せからなります。
例えば、京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設であれば、[Kyo]です。
ラボコードは、重複がないように、国際的に管理されています。
さて、X研究所の近交系Aと、Y研究所の近交系Aは、どのように表記されるでしょう?
X研究所のラボコードをXj、Y研究所のラボコードをYj、としましょう。
そうすると、X研究所の近交系Aは、A/Xj とあらわすことができ、Y研究所の方は、A/Yj となります。
A/Xj と A/Yj、区別できましたね。
「中身が違えば、名前も変える」
あれっ、どっかで聞いたことがあるような。。。
A/Xj と A/Yj、いずれも近交系です。
そして、同じ系統から由来する系統同士を、亜系統と呼んでいます。