2019年4月26日金曜日

三種混合麻酔の調整法

三種混合麻酔の特徴を以前紹介しました。

ここでは、実際に調整する具体的な方法を紹介します。

市販のメデトミジン(商品名・ドミトール)、ミダゾラム(商品名:ドルミカム)、ブトルファノール(商品名:ベトルファール)は液体の状態で販売されています。

それぞれの濃度は、以下の通りです。
  • ドミトール    1 mg/mL
  • ドルミカム    5 mg/mL
  • ベトルファール  5 mg/mL

ラット体重100g当りの必要量(mg)は、以下の通りでした。
  • ドミトール    0.015 mg
  • ドルミカム    0.20 mg
  • ベトルファール  0.25 mg

なので、ラット体重100g当りの必要量(mg)を含む量(mL)は以下の通りになります。
  • ドミトール    0.015 mL
  • ドルミカム    0.040 mL
  • ベトルファール  0.050 mL

生理食塩水でかさ増しし、切りのよい数字にしましょう。
  • ドミトール    0.015 mL
  • ドルミカム    0.040 mL
  • ベトルファール  0.050 mL
  • 生理食塩水    0.395 mL
  •            0.500 mL

しかし、測り取るのが大変ですね。なので、すべて20倍にして測り取りましょう。
  • ドミトール    0.3 mL
  • ドルミカム    0.8 mL
  • ベトルファール  1.0 mL
  • 生理食塩水    7.9 mL
  •          10.0 mL

できました。このようにして調整した麻酔薬のうち0.5mLを用いれば、体重100gのラットを麻酔できます。

2019年4月24日水曜日

農大飼養学_004_脂質とは

脂質(lipid)とは、タンパク質、糖質に対応する言葉です。

グリセリンと脂肪酸のエステルです。

なので、加水分解すると脂肪酸を遊離します。

生体を構成する脂肪酸は、長い炭化水素鎖をもちます。
最大で24個の炭素原子からなりますが、最も多い脂肪酸はC16やC18のような偶数個の炭素原子からなる脂肪酸です。

脂質は官能基をもたないものとしてしても定義づけられています。
官能基をもたないので、水素結合を形成する能力に欠け、多くは水に溶けません。(逆に、多くの脂質は非極性な有機溶媒には溶けます。)

以上の脂質の特徴とまとめますと、
  1. 水に不溶だが、有機溶剤に溶ける。
  2. 加水分解により脂肪酸を遊離する。
  3. 生物体により利用される。
この3つは、W.R.Bloor (1925)による脂質の定義を同じになります。


参考文献
エッセンシャル生化学
生化学辞典
Bloor, W. R. "Biochemistry of the Fats". Chem. Rev. 19252, 243–300.

2019年4月18日木曜日

農大飼養学_003_栄養と栄養素

「ちゃんと栄養とってますか?」よく言われませんか?

実は、この質問間違っています。

なぜなら、「栄養」という言葉が間違って使われているからです。

「栄養」とは、「生物が、外界から物質を摂取し、それによって体の機能を維持し高めること」をいいます。

摂取する物質の個々のものを「栄養素」といいます。

「栄養」とは現象(こと)であり、「栄養素」は具体的な物質(もの)を指します。

なので厳密には、
「ちゃんと栄養してますか?」あるいは「ちゃんと栄養素とっていますか?」という質問になると思います。

区別して使いたいものです。

参考:岩波生物学辞典

2019年4月16日火曜日

農大飼養学_002_飼養学の位置づけ

飼養学は、飼養を科学的に分析して、効率的で再現性のある飼養を目的とします。

なぜ飼養をするのでしょうか?

人間が動物の生産物(タンパク質、脂質、労役など)を得るためです。

効率よく生産物を得るには、「えさ」と動物の体の中で起こっていること、つまり「代謝」を対象とした分析が必要です。

えさの分析に関しては、飼料学。
代謝に関しては、栄養学があります。

まとめると、飼養学は、飼料学、栄養学を含む学際的な学問です。
また、飼育管理に関する分野も含みます。いつ、どれくらいのえさを与えるか?動物種ごとに適したえさは?なども重要ですから。

最後に、生化学によって、えさ、代謝、生産物は、タンパク質、アミノ酸、ビタミンなどの分子の形で理解されています。さらに、分子生物学的解析により遺伝子レベルでの理解も進んでいます。




農大飼養学_001_言葉から考える「飼養」

飼養とは、動物を飼い養うこと。『広辞苑第4版』

飼う:1)動物に○○を与える。
   2)動物に食を与えて養う。
   3)投与する。盛る。
   『広辞苑第4版』

元は、動物に水やえさを与えるという意味があったようですが、現在ではほとんど使わないのではないでしょうか。

現在は、動物に食を与えて養うという意味。対象は、動物。


養う:1)子供を育てる。養育する。
   2)えさを与えて動物を飼う。
   3)体力・気力が衰えないように保つ。
   4)つちかう。
   『広辞苑第4版』

飼う、養うともに古くから使われている言葉です。
例えば、徒然草には「養いかう物には牛馬」、万葉集には「たらちねの母が飼う蚕の繭隠り」とあります。

以上より、「飼養」という言葉は、わりと新しい言葉で、「飼う」と「養う」を組み合わせて、作られたと思われます。

また、飼養の対象は動物全般なので、対象を明確にするために。家畜飼養、家禽飼養と言葉があります。愛玩動物飼養、実験動物飼養、爬虫類飼養、両生類飼養なんて言葉も作り出すことができますね。