2013年10月8日火曜日

なぜ、兄妹交配は20回必要か?

動物実験に用いるマウスやラットでは、それらの遺伝的な均一性を保つために、近交系 (inbred strain) というものを作製します。
近交系の作製には、生まれてきた同腹の雄と雌をかけ合わせて、その産子を得る。
そして、その産子の中の雄と雌をかけ合わせて、さらに、産子を得る、ということを繰り返します。
このような同腹の雄と雌を交配することを、兄妹交配といいます。
兄妹交配を20回以上繰り返すと、近交系として確立できた、といえます。

兄妹交配を繰り返していくと、任意の遺伝子座がある対立遺伝子のホモ接合(例えば、a/a, A/A)となります。
そして、同じタイプの対立遺伝子のホモ接合同士が、掛け合わさるようになります。
このようなタイプの掛け合わせをを「インクロス」といいます。

インクロスから得られる遺伝子型は、ひとつしかありません。
例えば、a/a X a/a から得られる遺伝子型は、a/aのみ。
つまり、一度、a/a X a/a のようなタイプのかけ合わせがおこると、その遺伝子座は、次世代以降つねに、a/a X a/a の掛け合わせとなり、得られる遺伝子型は、a/a のみとなります。
このような状態を、遺伝子座が固定したといいます。

兄妹交配を20回以上続けると、全遺伝子座の98.0%でインクロスがおこると理論的にいわれています。
この数値をもとに、兄妹交配を20回以上=近交系、としているのです。

でも、残り2%の遺伝子座では、まだ、遺伝子座は固定していません。
そこで、さらに、兄妹交配を続けます。
兄妹交配40回でインクロスの確率は99.97%、60回で99.99%と計算されます。

近交系の理論を、以前、LABIO21という日本実験動物協会の情報誌で発表しました。
許可を得て、以下のHPで掲載しています。
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/Kuramoto/contents/ExpAnimGenet.htm