2016年7月19日火曜日

F344ラット亜系統におけるdipeptidyl peptidase IV (DPP4)/CD26活性の違い

dipeptidyl peptidase IV (DPP4)という酵素があります。
この酵素は、ペプチドを基質に、そのN末のジペプチドを遊離させます。

ホルモン制御、免疫反応、腎ペプチドの加水分解などに重要な働きをしていると考えられています。

実は、F344ラットのうち、日本チャールス・リバー社のF344ラットは、この遺伝子にミスセンス変異(Gly633Arg)をもっており、DPP4活性が欠損しています。

他方、日本SLCのF344、日本クレアのF344は、この遺伝子は正常で、DPP4活性を持っています。

マウスに高脂肪食を与えると、肥満や高インスリン血症になりますが、DPP4遺伝子のノックアウトマウスに高脂肪食を与えても、肥満、インスリン血症になりません。

おそらく、ラットでも同様のことがいえると思います。F344ラットを用いて高脂肪食で肥満を誘発する実験を行う場合は、どのブリーダーのF344を用いるか考慮する必要があります。

追加:
チャールス・リバー社のF344ラットのうち、ドイツのチャールス・リバーのF344はDPP4が欠損しています。しかし、米国チャールス・リバー社のF344はDPP4活性があります。

参考資料:
Watanabe et al., (1987) Experimentia 43:400-401
Thompson et al., (1991) Biochem J 273:497-502
Tsuji et al., (1992) Biochemistry 31:11921-11927
Erickson et al., (1992) JBC 267:21623-21629