2017年3月6日月曜日

近交系数 (coefficient of inbreeding)

非常に小さい集団では、血縁関係のある個体同士の交配が行われます。これを近交 (inbreeding)といいます。近交の程度は、近交係数 (coefficient of inbreeding)で表します。

近交係数とは、ある個体の任意の遺伝子座位において2つの対立遺伝子が同一である確率、です。the probability that the two genes at any locus in an individual are identical by decent.

少し専門的ですが、この [identical by decent]とは、祖先が持っていたある対立遺伝子のコピーが、近交が起こった結果、次世代あるいはそれ以降の世代で「同一の」対立遺伝子のホモ接合となったことを言います。two genes that have  originated from the replication of one single gene in a previous generation may be called identical by descent or simply identical.

そのため、近交係数とは、以下のように定義されます。

「1個体がある遺伝子座位についてホモ接合体であって、しかもその二つの対立遺伝子が共通祖先にあった1つの対立遺伝子に由来したものである確率」

実験動物のマウスやラットでは、兄妹交配を20世代以上行うことで、様々な近交系 (inbred strain) が作製されています。このような近交系では、近交係数が0.986以上になると言われています。

参考資料
Introduction to quantitative genetics (Falconer & Mackay)
人類遺伝学―基礎と応用―改訂第2版(金原出版)